近年小児のアレルギー患者が増加しているが,アレルギー発現に対する予測や対応法などが確立していないのが現状である.今回,アレルギーを有する患児における,歯科薬剤・材料に対して,アレルギー検査を行った3症例を報告する.
症例1 1歳7か月男児.抗菌薬および食物に対するアレルギーの既往がある.齲蝕および外傷にて抜歯を行った後に床型保隙装置作製のため,局所麻酔剤の皮内テスト,充填材料,床用レジン材料,歯科用金属についてのパッチテストを行った.その結果,修復用コンポジットレジンおよび一部の局所麻酔剤に陽性反応が認められた.
症例2 5歳10か月女児.近医にて修復用コンポジットレジンに対するアレルギーを指摘された.充填材料,床用レジン材料,歯科用金属についてパッチテストを行った結果,修復用レジンおよび一部の金属に陽性反応が認められた.
症例3 2歳6か月女児.食物のアレルギーがあり,局所麻酔剤の皮内テスト,充填材料,歯科用金属,フッ化物についてパッチテストを行った結果,修復用レジン,一部の局所麻酔剤,フッ化物にアレルギー反応が認められた.
以上の症例は,アレルギーの既往のある患児に対しては,重篤なアレルギー反応が起こることを避けるためにも,患児および家族に対して十分な医療面接を行い,小児科など諸機関との連携を密にとり,早期に適切な対応を行うことが重要であることを示している.
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