抄録
近年小児のアレルギー患者が増加しているが,歯科治療時におけるアレルギー症状の発現に対する予測や対応法などは確立されていない。今回,当科来院児のアレルギーの有病者率の把握とアレルギーをもつ小児に対しての安全な歯科治療の指針づくりに寄与する目的で,実態調査を行った。
対象は平成15年1月から平成17年12月の間に本学小児歯科外来に初診で来院した0歳から12歳の小児1745名とし,予診表,診療録を用いて調査を行った。その結果
1.1745名のうち何らかのアレルギーを有する小児は683名(39.1%)であった。
2.アレルギーの既往のある小児とない小児の主訴には大きな違いは認められなかった。
3.アレルギーの種類では,アトピー性皮膚炎の割合が最も多く,次に食物,喘息,薬物の順に多い結果となった。
4.アレルギーの既往のある小児のほうが,アレルギーのない小児と比較して局所麻酔経験が多かった。
5.歯科治療前に局所麻酔薬の皮内テストやプリックテスト,歯科用金属,歯科用薬品,材料のパッチテストを行った小児は25名であった。今後も十分な医療面接により,薬物や食物などへのアレルギー反応の有無を聞きとることの重要性が示唆された。そしてその結果から危険性が考えられる場合には,歯科治療前にアレルギー検査を施行し,不測な事態を未然に防ぐことが小児歯科臨床において重要であると考えられた。