【はじめに】
Motor Fitness Scale(以下、MFS)は14項目で構成される質問票であり、移動性・筋力・平衡性といった運動能力を評価できる。また、MFSは、信頼性、基準関連妥当性、構成概念妥当性、予測妥当性が高く、一般高齢者においてMFS得点はパフォーマンステストと関連があることが報告されている。本研究では、二次予防対象者を対象に、MFS得点をさらにカテゴリー別にし、パフォーマンステストとの関連性を再検討することが目的である。
【方法】
対象は、当地域在住の二次予防対象高齢者236名(男性51名女性185名)である。パフォーマンステストは、10m最大歩行時間、Timed Up and Go test(以下、TUG)、握力、左右膝伸展筋力、開眼・閉眼片脚立ち時間、ファンクショナルリーチテスト、長座位体前屈を実施した。質問紙では、MFS、Modified Falls Efficacy Scale、老研式活動能力指標を実施した。MFSは、移動性・筋力・平衡性を質問紙形式で評価するものであり、「はい」は1点、「いいえ」は0 点の14点満点である。移動性は項目1~6で6点満点、筋力が項目7 ~10で4点満点、平衡性が項目11~14で4点満点である。基本特性による群分けでは、前期および後期高齢者、要介護発生リスクとしてのMFS得点により、男性は11点、女性は9点をカットオフ値とし群分けした。統計学的には、2群間の差の検定には対応のないt検定
(Mann-Whitney's U test)を用い、MFSと各パフォーマンステストおよび質問紙評価との相関の検討には、Spearmanの順位相関係数および重回帰分析を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
MFS得点による基本特性では、最大歩行速度やTUGによる移動性において、MFS得点が低ければパフォーマンステストも低下した
(p<0.01)。また、MFS移動と最大歩行速度の相関係数は0.46(p<0.01)、年齢・性別を調整変数とした標準化回帰係数βは0.38であり、MFS移動のみでも正の関連が認められた(決定係数R 2 =0.29)。MFS 移動とTUGの相関係数は-0.42(p<0.01)、年齢・性別を調整変数とした標準化回帰係数βは-0.32であり、MFS移動のみでも負の関連が認められた(決定係数R 2 =0.26)。MFS筋力と左右の握力との相関は、MFS合計よりもMFS筋力の方が有意な関連性が認められた(決定係数R 2 =0.54)。
【結論】
MFS得点は一般高齢者だけでなく、二次予防対象高齢者のパフォーマンステストとも関連があることが示唆された。MFS得点は運動機能因子の中でも、移動性と関連が強い傾向にあり、MFS移動の6 項目のみの聞き取りでも十分に代替可能なスクリーニングである。高齢者の将来的な要介護発生リスクには移動性の低下が先行している可能性があると考える。また、MFS筋力の4項目は、筋力を代表する握力を十分反映していると考える。MFSは運動機能を評価する上で、パフォーマンステストに代替可能なスクリーニングとして活用できる可能性がある。
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には本研究に参加するにあたり、口頭と書面で十分に説明した後、書面にて同意を得た。また、当自治体健康長寿課より同意を得ている。
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