本研究は,基礎的な表現力を育成することを目的とした大学生等対象の記憶画プログラム開 発において,記憶画の形態を出入力する能力である「形状ストック」に着目し,改めてイメー ジの表象に不可欠な感性レベルの統合を確認し,作品評価を「形象」と「感性」の 2 構造で 行う教育的可能性を実証した。 1 )形状ストックの指標設定に当たっては,量的・分析的な 「形象レベル」のみでは不十分であり,質的・包括的な「感性レベル」を想定することが必 要であった。 2 )モデルのある長期記憶の「記憶スケッチ」と「見て描くスケッチ」の対比 は,筆者の設定した 5 段階の評価指標では,平均3.2から4.6となり,一般的な形態から特殊な 形態への移行を示した。 3 )モデルのない自伝的記憶を表す記憶絵本において形象は象徴的 に選択され,感性レベルの主張を強く確認した。
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