本研究の目的は, 自傷行為傾向に及ぼす親子関係の影響を検討することである. 自傷者は親からの 「不承認」 を含めて, どのような不適切な親子関係に影響を受けているのか, そして高校生から大学生に至る親子関係の発達的推移において, 自傷傾向を顕著に示す対象者はどのような親子関係の発達的特徴を有するのか, をそれぞれ明らかにする. 方法として, 高校生426名と大学生262名を対象に, 自傷行為尺度4) と親子関係尺度8) の関係を吟味した. その結果, 両親から自傷者への 「不承認」, また, 母親からの過干渉と同時に適切なサポートが供与されないといった矛盾した関わり方がそれぞれ子どもの自傷行為を誘発していることが判明した. さらに, 自傷者は親子関係における心理的離乳の発達段階に到達していないことも明らかとなった. 以上のことから, 自傷の低減には, 親子相互の建設的関係の再構築が必要であることが示唆された.
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