遺伝的にビタミンC (V.C) を合成できないODSラット (14週齢, 雌) を用いて, V.C欠乏が骨に及ぼす影響を調べた結果, 以下のことが判明した.
(1) V.C補足食餌 (V.C-free飼料とV.C添加水) で2週間飼育後, V.C-free食餌 (V.C-free飼料とV.C無添加水) で1週間飼育したC1群, V.C補足食餌で1週間飼育後, V.C-free食餌で2週間飼育したC2群, V.C-free食餌で3週間飼育したC3群, いずれのV.C欠乏群も, V.C一補足食餌で3週間飼育した対照群と同程度の体重増加を示した.
(2) 骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ (ALP) 活性は血清と大腿骨中で, C1, C2, C3いずれのV.C欠乏群でも対照群との差が認められなかった.
(3) 骨吸収マーカーである酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ (TRAP) 活性は, C2, C3群の血清及び大腿骨において対照群の1.4~1.8倍に有意に上昇した.
(4) 大腿骨のカルシウム (Ca) 量とヒドロキシプロリン (Hyp) 量も, C2とC3群において対照群の約90~80%に有意に減少した.
(5) in vitroの骨芽細胞株 (MC3T3-E1) の培養実験においてV.CはALPの発現に必要とされているが, 十分に分化した骨芽細胞とコラーゲンマトリックスがすでに存在している成熟ラットの大腿骨においては, V.C欠乏によって, ALP活性の減少は認められず, TRAP活性が上昇した.
これらの結果は, 生体のV.C欠乏時においては骨形成の減少ではなく骨吸収の増加が, 骨CaとHypレベルの減少を引き起こしたことを示唆するものである.
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