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クエリ検索: "後頭下筋"
136件中 1-20の結果を表示しています
  • 肉眼解剖による観察
    上田 泰久, 福井 勉, 小林 邦彦
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 P1-164
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】座位姿勢において上半身質量中心位置(Th7-9)を前方へ移動すると頭部を水平に保つために下位頚椎は伸展して上位頚椎は屈曲し、後方へ移動すると下位頚椎は屈曲して上位頚椎は伸展することが観察できる。座圧中心は上半身質量中心位置を投影している重要な力学的な指標である。我々は第64回日本体力医学会大会(2009年)において「座圧中心と頚椎の回旋可動域の関連性」について報告し、左右の移動では座圧中心を頚椎の回旋側とは逆側へ移動すると回旋可動域が有意に向上したが、前後の移動では回旋可動域に有意差はない結果を得た。しかし、座圧中心の前後の移動では頚椎回旋の運動パターンが異なることが観察されたため、頭部肢位の変化により
    後頭下筋
    群の働きに違いがあるのではないかと考えた。今回、頭部肢位の違いと
    後頭下筋
    群の関係について肉眼解剖を行い観察することができたため報告する。
    【方法】名古屋大学大学院医学系研究科の主催する第29回人体解剖トレーニングセミナーに参加して肉眼解剖を行った。86歳男性のご遺体1体を対象とした。仰臥位で後頚部の剥皮後、左側の僧帽筋上部線維,頭板状筋,頭半棘筋を剥離し、左側の
    後頭下筋
    群(大後頭直筋,小後頭直筋,上頭斜筋,下頭斜筋)を剖出した。剖出した
    後頭下筋
    群を観察した後、他動的に頭部肢位を屈曲位および伸展位に変化させた
    後頭下筋
    群の状態を観察した。さらに、頭部肢位を変化させた状態から他動的に頚椎を左回旋させ、
    後頭下筋
    群の状態を観察した。
    後頭下筋
    群の状態はデジタルカメラを用いて撮影した。他動的な頭部肢位の変化と左回旋の誘導は1名で行い、デジタルカメラ撮影は別の検者が行った。
    【説明と同意】学会発表に関しては名古屋大学人体解剖トレーニングセミナー実行委員会の許可を得た。
    【結果】頭部肢位を屈曲位にすると上位頚椎も屈曲位となり、左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が離れて緊張した状態になった。一方、伸展位にすると左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が近づき弛緩した状態になった。頭部肢位を屈曲位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋は緊張した状態から軽度弛緩した状態へと変化した。一方、伸展位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋はより一層弛緩した状態へと変化した。左小後頭直筋,左上頭斜筋は頭部肢位に関係なく他動的な左回旋では著明な変化は観察できなかった。
    【考察】大後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節,環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる。小後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈させる。上頭斜筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈して逆側に回旋させる。下頭斜筋は両側が働くと環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる(河上ら,1998)。自動的に左回旋をする場合、左側(同側)の大後頭直筋,下頭斜筋は上位頚椎の回旋運動に大きく関与し、左側(同側)の上頭斜筋,小後頭直筋は回旋運動に対して拮抗する固定的な要素が強いと考えられている(五百蔵,1988)。
    後頭下筋
    群は筋紡錘の密度が高く非常に小さい筋群である(Kulkarni et al. ,2001)。そのため、頭部肢位の変化に伴い起始と停止の位置関係が大きく変わることは筋長に決定的な影響を与え、収縮のしやすさが変化すると考える。つまり、頭部肢位が屈曲位にある場合、
    後頭下筋
    群は緊張した状態であり収縮しやすい条件であると考えられる。一方で伸展位にある場合、
    後頭下筋
    群は弛緩した状態であり収縮しにくい条件であると考えられる。以上より、頭部肢位を屈曲位の条件では
    後頭下筋
    群が働きやすく、上位頚椎の回旋が誘導されやすい運動パターンになるのではないかと考えた。
    【理学療法学研究としての意義】頭部前方変位の姿勢を呈する症例では、胸椎が後彎して下位頚椎は屈曲位で上位頚椎は伸展位になり、
    後頭下筋
    群が短縮して伸張性が低下していることがある。このような症例では、
    後頭下筋
    群の伸張性を徒手的に改善させるだけでなく、姿勢と関連させて
    後頭下筋
    群が働きやすい状態にすることが望ましいと考える。本研究は、肉眼解剖により実際に
    後頭下筋
    群を観察して確認した研究である。
    後頭下筋
    群は姿勢制御においても大変重要な役割があるといわれており、ご遺体1体の観察ではあるが姿勢と
    後頭下筋
    群を関連させた理学療法学研究として意義のあるものと考えている。
  • 平良 眞也, 目島 直人, 神山 寛之
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P2-073
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日々の臨床の中で、姿勢を変える事で様々な変化が出てくる事はセラピストなら誰でも経験する事である.担当の患者で野球を趣味に持つ方の治療をしている際に、打撃姿勢を変え、頚部の筋緊張の調整を行った際に、『ボールが見やすくなった』とのコメントが聞かれた.
    そこで今回、
    後頭下筋
    群の筋緊張を変化させた時に衝動性眼球運動にどのような影響があるのか、関連性を調べたので以下に報告する.
    【方法】今回の研究の意図をしっかり説明した上で了承を得た、身体に問題のない健常成人9名.左右の目を片目ずつ、眼球運動幅を計測する.計測方法は、まず壁にテープメジャーを横にして貼り付け、被検者の目線の高さに合わせて設定する.そして被検者の目と壁の距離を30cmに設定し、端坐位をとらせる.計測は被検者には左目を押さえてもらい、頭部を動かさないように注意してもらう.その時、目の前の数字を基準に、テープメジャー上の目盛の数字がはっきり見える所までを答えてもらい、基準からの距離を計測した.これを耳側方向、鼻側方向の距離を計測し、左目も同様に計測した.
    そして被検者の眼球運動を左右方向で行い、その時に左右どの方向に動かし易いかを聴取し、
    後頭下筋
    群の筋収縮の強弱を徒手にて左右差を確認した.そして筋収縮の左右差と眼球運動幅、眼球の動かし易さと眼球運動幅の関連を調べた.また、
    後頭下筋
    群の筋緊張を左右ほぼ同等となるよう坐位姿勢を変化させ、眼球運動幅の変化をアプローチ前と同様に計測、比較した.
    【結果】(眼球の動かし易さと眼球運動幅)左右へ眼球運動を行なってもらい比較した結果、9例中7例、眼球運動幅が大きい側と反対方向に眼球の動かしやすさを訴えた.(
    後頭下筋
    群の筋収縮の左右差と眼球運動幅)9例中7例が、左右の眼球運動で眼球運動幅が大きかった目の側と反対側
    後頭下筋
    群の筋緊張が高かった. (アプローチ前後の眼球運動幅)アプローチ後、被検者9例中8例が眼球運動幅が増大した.殆どの被検者において動かし易さが変化したと訴えた.
    【考察】スポーツでは動体視力が必要となる.その中で衝動性眼球運動に焦点を当てた.当初、眼球運動幅が大きい側の目の方向に動かし易いと考えていたが、反対の結果となった.これは眼球を動かしにくい側の眼球運動を動かし易い側で代償しているのではないかと考える.そして
    後頭下筋
    群の筋収縮の差も、努力性筋収縮を引き起こしていたのではないかと考える.また、坐位姿勢を変化させ、頭頚部の筋緊張を変化させた事で眼球運動幅の増大が起こった理由として、衝動性眼球運動及び頚部運動の両方を駆動するものが運動前野にある事、運動前野の腹側部位が刺激を受けると、衝動性眼球運動を活性化する事から、
    後頭下筋
    群の筋緊張の調整をする事で眼球運動が活性化し、眼球運動幅も増大したものと考える.
    【まとめ】衝動性眼球運動と
    後頭下筋
    群の筋緊張には関連があると考えられる.
  • 田草川 雅道, 坂爪 伶
    運動器理学療法学
    2022年 2 巻 Supplement 号 P-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
  • 増井 健二
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P3-391
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】今回、頸椎骨折に伴う骨アライメント異常を呈した一症例を経験した.画像評価と分節的な鑑別評価に基づき頸椎の特徴的な代償メカニズムを把握した上で、理学療法を展開した.若干の考察を加え報告する.

    【症例紹介】本発表に同意が得られた33歳、男性、会社員(営業職).2007年8月4日 タクシー乗車にて交差点右折中に対向トラックに左側から衝突され受傷.左前額部割創・頸部痛を認め救急搬送され、第7頸椎右椎弓・右上関節突起骨折の診断を受け安静加療目的で入院となる.

    【初期評価及び治療】2007年9月14日 退院し、受傷後約8週間の硬性カラー固定期間を経て、10月3日より理学療法開始.当初は前屈20°後屈20°側屈 右5°左10°回旋 右20°左20°であり筋性の防御収縮による全方向への著明な関節可動域制限を認めた.過緊張状態を呈していた筋群に対し、温熱療法やマッサージ、ストレッチ等の徒手療法を施行した.11月27日には前屈40°後屈30°側屈 右20°左25°回旋 右30°左45°と特に回旋において左右差が顕著となり、右
    後頭下筋
    群に過緊張状態を認めた.右
    後頭下筋
    群等の過緊張や短縮があれば、右回旋に比べ左回旋にて伸張されると考えられ、頸部の右回旋制限と右
    後頭下筋
    群の過緊張では関節可動域制限の因果関係において解釈が困難であった.

    【治療プログラムの再考】CT画像を再度詳細に観察し、第7頸椎の骨折に加え、第6頸椎が第7頸椎に対して7°左回旋位を呈していた.また上位頸椎では環椎は軸椎に対して8°右回旋位を呈していた.このことから、第6・7頸椎間の左回旋位を右
    後頭下筋
    群の持続的収縮により環軸関節で右回旋させることで代償的に頭部正中位を保持していたと解釈できる.また頸椎回旋において、分節的な関節可動域を鑑別する際、頸椎を左側屈させ下位頸椎の同側回旋位のまま上位頸椎を右回旋させることで環軸関節での右回旋可動域を評価することができる.この方法により、環軸関節において右回旋制限も混在すると判断した.環軸関節に対し分節的な治療を実施し右回旋30°から40°までには改善が得られた.

    【結果】2008年2月4日には職場復帰され、5月26日 前屈55°後屈35°側屈 右40°左35°回旋 右40°左65°.完全な関節可動域改善は困難と判断し、骨アライメント異常による弊害や日常生活上での自己管理について十分に説明し納得が得られたので理学療法を終了した.

    【おわりに】治療の展開に当たり、即時効果のみにとらわれず、頸椎の特徴的な代償メカニズムを熟知し、鑑別評価から病態の把握に基づく理学療法の構築が必要であると痛感した.
  • 五百蔵 一男
    昭和医学会雑誌
    1988年 48 巻 6 号 681-692
    発行日: 1988/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨格筋の機能と筋線維構成の関係を明らかにする研究の一環として,
    後頭下筋
    につき, その横断面積, 断面の筋線維総数, 1mm2中の筋線維数, 筋線維の太さ, 密度等を算出し, 他と比較した.材料は学生実習用の10%ホルマリン水注入屍11体 (男性6, 女性5, 平均年齢73.2歳) から得られた大後頭直筋, 小後頭直筋, 上頭斜筋, 下頭斜筋の4筋でセロイジン包埋, HE染色標本によった.結果は次のごとくである.1) 筋腹横断面積および断面の筋線維総数は男女とも下頭斜筋, 大後頭直筋, 上頭斜筋, 小後頭直筋の順に大で多かった.男女別には断面積では男性の方が女性よりも優る傾向が見られたが, 線維数では一般に性差はなく下頭斜筋のみに男性優位の傾向が見られたに過ぎなかった.2) 1mm2中の筋線維数は, 男女平均で下頭斜筋が最も多く, 上頭斜筋がこれに次ぎ, 以下, 大, 小後頭直筋はほぼ等しく, 頭斜筋が後頭直筋よりも多い傾向がみられた.他筋に比べて, 4筋とも外腹斜筋, 腹横筋等よりも少なく, 中間的な筋群に属した.3) 筋線維の太さは, 小後頭直筋が最も大, 大後頭直筋がこれに次ぎ, 上, 下頭斜筋が相等しくて最も小で頭の固定に働く筋が頭の回旋に働く筋よりも大であった.他と比較すると, 4筋とも僧帽筋中間部よりも遥かに小, 大腰筋よりも大であり, 一般に骨問の一定位の保持に働く筋に最も近かった.4) 筋線維の密度は, 下頭斜筋と小後頭直筋, 上頭斜筋と大後頭直筋がそれぞれ相等しく, 前者が後者よりも優っていたが, 女性では4筋とも相等しくて差がなく, 上頭斜筋と大後頭直筋では女性の方が男性よりも密度が高かった.4筋とも外腹斜筋, 内腹斜筋, 腹横筋, 腸骨筋よりも低く, 身体支持筋の特徴を示していた.5) 組織所見では, 筋線維の大小不同は小後頭直筋に, 萎縮は上頭斜筋と下頭斜筋にそれぞれ多く, 結合組織性の筋周膜増加は大後頭直筋と下頭斜筋で男性に多い傾向がみられた.6) 筋線維の太さの分布型から見て, 大後頭直筋と小後頭直筋は頂点の低い分布型が多く, 上頭斜筋と下頭斜筋は逆に高い分布型が多く, 後者の方が萎縮傾向が強く小型に均一化していると考えられた.
  • ―MRIを用いた大後頭直筋の筋肉内脂肪計測―
    光武 翼, 中田 祐治, 岡 真一郎, 平田 大勝, 森田 義満, 堀川 悦夫
    理学療法学Supplement
    2014年 2013 巻 0804
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    後頭下筋
    群は筋紡錘密度が非常に高く,視覚や前庭覚と統合する固有受容器として中枢神経系との感覚運動制御に関与する。
    後頭下筋
    群の中でも深層の大小後頭直筋は頸部における運動制御機能の低下によって筋肉内に脂肪浸潤しやすいことが示されている(Elliott et al, 2006)。脳梗塞患者は,発症後の臥床や活動性の低下,日常生活活動,麻痺側上下肢の感覚運動機能障害など様々な要因によって
    後頭下筋
    群の形態的変化を引き起こす可能性がある。本研究の目的は,Magnetic Resonance Imaging(以下,MRI)を用いて
    後頭下筋
    群の1つである大後頭直筋の脂肪浸潤を計測し,脳梗塞発症時と発症後の脂肪浸潤の変化を明確にすることとした。また,多変量解析を用いて大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を明らかにすることとした。【方法】対象は,脳梗塞発症時と発症後にMRI(PHILPS社製ACHIEVA1.5T NOVA DUAL)検査を行った患者38名(年齢73.6±10.0歳,右麻痺18名,左麻痺20名)とした。発症時から発症後のMRI計測期間は49.9±21.3日であった。方法は臨床検査技師によって計測されたMRIを用いてT1強調画像のC1/2水平面を使用した。取得した画像はPC画面上で画像解析ソフトウェア(横河医療ソリューションズ社製ShadeQuest/ViewC)により両側大後頭直筋を計測した。Elliottら(2005)による脂肪浸潤の計測方法を用いて筋肉内脂肪と筋肉間脂肪のpixel信号強度の平均値を除することで相対的な筋肉内の脂肪浸潤を計測した。大後頭直筋の計測は再現性を検討するため級内相関係数ICC(2,1)を用いた。発症時と発症後における大後頭直筋の脂肪浸潤の比較はpaired t検定を用いた。また,大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を決定するために,発症時から発症後の脂肪浸潤の変化率を従属変数とし,年齢,Body Mass Index(以下,BMI),発症から離床までの期間(以下,臥床期間),Functional Independence Measure(以下,FIM),National Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),発症時から発症後までのMRI計測期間を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。回帰モデルに対する各独立変数はp≧0.05を示した変数を除外した。回帰モデルに含まれるすべての独立変数がp<0.05になるまで分析を行った。重回帰分析を行う際,各独立変数間のvariance inflation factor(以下,VIF)の値を求めて多重共線性を確認した。すべての検定の有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】すべての患者に対して文章,口頭による説明を行い,署名により同意が得られた者を対象とした。【結果】対象者のBMIは21.5±3.3,臥床期間は5.3±9.5日,FIMは84.6±34.5点,NIHSSは5.6±5.9点であった。大後頭直筋の脂肪浸潤におけるICC(2,1)は発症前r=0.716,発症後r=0.948となり,高い再現性が示された。脳梗塞発症時と発症後に対する大後頭直筋の脂肪浸潤の比較については発症時0.46±0.09,発症後0.51±0.09となり,有意な増加が認められた(p<0.001)。また重回帰分析の結果,大後頭直筋における脂肪浸潤の変化率に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出された。得られた回帰式は,大後頭直筋の脂肪浸潤=1.008+0.018×NIHSSとなり,寄与率は77.5%(p<0.001)であった。多重共線性を確認するために各変数のVIF値を求めた結果,独立変数は1.008~4.892の範囲であり,多重共線性の問題は生じないことが確認された。【考察】脳梗塞患者の頸部体幹は,内側運動制御系として麻痺が出現しにくい部位である。しかし片側の運動機能障害は体軸-肩甲骨間筋群内の張力-長さ関係を変化させ,頸椎の安定性が損なわれる(Jull et al, 2009)。この頸部の不安定性は筋線維におけるType I線維からType II線維へ形質転換を引き起こし(Uhlig et al, 1995),細胞内脂肪が増加しやすいことが示されている(Schrauwen-Hinderling et al, 2006)。脳梗塞発症時のMRIは発症前の頸部筋機能を反映し,発症後のMRIは脳梗塞になってからの頸部筋機能が反映している。そのため,脳梗塞を発症することで大後頭直筋の脂肪浸潤は増加する可能性がある。また大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出され,麻痺の重症度が関係している可能性が示唆された。今後の課題は,脳梗塞患者における大後頭直筋の脂肪浸潤によって姿勢や運動制御に及ぼす影響を検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】脳梗塞片麻痺患者は一側上下肢の機能障害だけでなく頸部深層筋に関しても形態的変化をもたらす可能性があり,脳梗塞患者に対する理学療法の施行において治療選択の一助となることが考えられる。
  • 井熊 良一
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P2-451
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    頚部は全脊柱の中で最も可動性の大きい部位である.また、頭部の位置制御にも関与している.そのため、慢性的に異常姿勢となっている症例の中には頭部の平衡反応を保つために特定の筋の緊張が高くなり筋や関節に負担がかかり障害も生じやすい.頚椎疾患の中で臨床上よくみられる頚椎椎間板ヘルニアに対してのアプローチを報告する.当院では頚椎椎間板ヘルニアに対しては徒手的牽引(Manual traction:以下M-tra)を行う.方法は軽度屈曲・神経根症状と反対側に側屈・回旋を行い徒手にて牽引を行う.今回の症例はM-traを行うことによって痛み・痺れが憎悪した症例に対してのアプローチを報告する.また、症例には同意を得た.
    【症例紹介】
    56歳女性.職業:教師.診断名:C5/6ヘルニア・胸郭出口症候群.主訴:右母指と示指が痺れる(Visual Analog Scale(以下VAS):5).感覚:右母指と示指が軽度鈍麻.頚部伸展時痛(VAS5).Wrightテスト陽性.Morleyテスト陽性.座位姿勢は頚部前方突出、肩甲骨外転・挙上・下方回旋、肩前方偏位、胸椎後弯、骨盤後傾.
    後頭下筋
    群・肩甲挙筋・僧帽筋上部線維・大小胸筋・斜角筋群のstiffnessが認められた.腹部の筋機能の低下が認められる.
    【治療方針・治療】
    治療方針としては頚部・上肢のstiffnessが認められる部位の伸張性の改善を行い、筋緊張の軽減した後にM-traを行うことで効果が得られるかと考え理学療法を実施した.治療の効果を判定するものとして頚部伸展時の痛みと痺れをVASにて評価する.(1)
    後頭下筋
    群・斜角筋群にstiffnessが生じているため、この部位の伸張の改善を行った.それによって、痺れに変化がみられなかったが頚部伸展時痛がVAS5→2になり頚部伸展のROMも拡大した.(2)大小胸筋の伸張性の改善を行った.痺れはVAS5→2に低下したが頚部の伸展時痛には変化がみられなかった.(3)M-traを行った.痺れはVAS2→1以下でM-traを行っているときはVAS0であった.頚部伸展時痛はVAS2→0となった.
    【考察】
    本症例に対してM-traを単独で行うと効果が得られなかったが頚部・上肢のstiffnessの伸張性の改善を行うことで効果が得られた.その理由として頚部・上肢のstiffnessがあることによって斜角筋部や大小胸筋部での神経が絞扼されたことによって痛みが増加したと考える.また、腹部の筋機能の低下、胸椎の後弯しているため肩甲骨が外転し、頚部は異常姿勢の平衡反応を保つために前方突出したのではないかと考えた.そのため、
    後頭下筋
    群や大小胸筋のstiffnessが生じたのではないかと考えている.今後も本症例のように頚部だけでなく上肢・体幹に問題が生じることがあるため各症例に対して考えてアプローチを行いたい.
  • 吉田 真一, 小塚 和豊, 大熊 康弘, 玉川 智子, 正能 千明, 荻野 拓也, 泉川 幸恵, 橋口 宏
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 546
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】腱板断裂術後における腱板機能訓練はセルフエクササイズ(ex)として行うことも重要である.しかし,セルフexでは運動方向や肢位を修正される機会がないため,不良肢位で実施している症例を少なからず経験する.今回,セルフexにペットボトルを使用し,水の揺れをフィードバックとして利用した腱板機能訓練が機能改善にどの程度有効か検討した.
    【方法】腱板以外の上肢・体幹に損傷がなく,両側断裂でない鏡視下腱板修復術(ARCR)を行った24症例を対象とし,腱板機能訓練にペットボトルを使用した群とセラバンドを中心としたコントロール群に無作為に分けた. ペットボトル群は,平均年齢60.0歳,断裂形態は完全断裂(小断裂は2例,中断裂4例,大断裂2例)8例,不全断裂(滑液包面断裂3例,関節包面断裂1例)4例であった.コントロール群は,平均年齢61.0歳,完全断裂(小断裂1例,中断裂2例,広範囲断裂1例)4例,不全断裂(滑液包面断裂6例,関節包面断裂2例)8例であった. 肩外転筋力の測定はマイクロフェットを用い,パット装着位置は肩峰より15cmとした.椅子座位で肩甲骨面上30°,60°,90°の最大等尺性収縮を5秒間行った.再現性向上のため,長さ調節可能な固定ベルトを取り付けた. 計測は,術前,腱板機能訓練開始日,訓練開始後1週おきに10週後までの5回を合わせた計7回行った. ペットボトルでの腱板機能訓練は水の揺れをフィードバックするように指導した.肩外転筋力の推移と両群間の比較を検討項目とし,統計学的処理は一元配置の分散分析,t-testを用い,危険率5%未満を有意差ありとした.
    【結果】すべての角度でペットボトルを用いた群とコントロール群で肩外転筋力の改善に有意な差を認めなかった.筋力の経時的変化は,30°において腱板機能訓練開始日(ペットボトルを用いた群:コントロール群)は57.8lb:52.2lb,以下2週後78.6lb:80.6lb,10週後106.7lb:93.7lbと,腱板機能訓練開始日と10週後の間で両群ともに統計的に有意な上昇を認めた.
    【考察】腱板機能訓練にペットボトルを用いた群はセラバンドを使用した群と筋力の改善において差はなく,同様に有意な改善効果を認めた.ペットボトルを用いた訓練は運動時に振動や音を生じさせ,触覚や聴覚の感覚系からのフィードバックを得られる.正しい運動と誤った運動では水の動きが異なるため,自ら運動を修正することができる.水の揺れから得られる反力は抵抗となり,筋機能改善につながったと考える.今回の研究により,感覚系へアプローチした運動は肩外転筋力の改善に有効で,セルフexを正確に行えると考える.
  • 和田 圭亮, 国分 貴徳
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 545
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】不良姿勢が原因で,項部の張り・疼痛を訴える症例は少なくない.今回喉頭癌に対する前頚部の手術による影響から不良姿勢を呈し,項部から肩にかけての張り・疼痛を訴える症例に対し,内科的疾患の既往歴と手術癧を考慮して治療を行ったので報告する.
    【症例紹介】68歳の男性で,H18年10月に項部から肩にかけての張り・疼痛を訴え当院受診・リハビリテーション開始となった.既往歴として喉頭癌(37年前)があり,放射線療法を行っていた.H17年10月に胃瘻造設,H19年1月から4月まで喉頭部手術のため他院に入院,H19年6月に当院を再受診・リハビリテーション再開,H19年8月に胃瘻を除去,現在食物は経口摂取している.手術では下咽頭・甲状腺全摘出し,気管傍部清術を行った.なお報告に際し,症例に説明し同意を得た.
    【理学療法評価・治療】座位姿勢は頭部・上部頚椎伸展位,下部頚椎から上部胸椎後彎が増強し,前頸筋群,胸椎伸展筋の機能低下がみられた.甲状軟骨・甲状舌骨筋・胸骨甲状筋は切除されている.頭部・上位頚椎左側屈・右回旋位,上部体幹右側屈位・左回旋位,左肩甲骨挙上位をとり,骨盤右後方回旋・後傾位で右後方重心であった.両側僧帽筋上部線維・
    後頭下筋
    群,特に左僧帽筋・右
    後頭下筋
    群,左広背筋に強いstiffnessが認められ,主訴として項部から両肩,特に左側に慢性的な張りと疼痛を訴えている.下部頚椎から胸椎伸展位を保持させ,関節運動を誘導しながら頭部屈曲を行わせることで,
    後頭下筋
    群の伸張性を改善しながら前頸筋群・上部体幹伸展筋促通を図った.また,座圧を左側へと移行していきながら,体幹右回旋・体幹伸展・頭部左回旋を自動介助運動にて行わせることで,特に左僧帽筋・右
    後頭下筋
    群・左広背筋のstiffness軽減を図った.
    【結果】頭位前方姿勢・下位頚椎から胸椎後彎が減少し,
    後頭下筋
    群・僧帽筋上部線維のstiffnessは軽減し,症状も軽減した.しかし,側彎が残存し,頚椎から胸椎伸展保持が不十分で頭位前方姿勢は残存した.
    【考察】通常,頭頚部は椎体前方に位置する椎前筋・前頚筋群,椎体後方に位置する
    後頭下筋
    群・脊柱起立筋などによって支持されている.前頚部の安定性は,前頚筋群,特に甲状舌骨筋・胸骨甲状筋が甲状軟骨を介し舌骨・胸骨に付着し,その張力による前頚部の支持がつくられることで高められると考えられる.しかし本症例では,下咽頭全摘出により甲状軟骨,甲状舌骨筋・胸骨甲状筋が切除され,前頚部の支持性が低下し,頭頚部屈曲が生じる.これに対し頭部伸展筋の過剰収縮と,下部頚椎から胸椎の後彎を増強させることで対応し,症状が出現している.したがって本症例では前頚部の支持性低下を考慮し,頭頚部屈曲モーメントを軽減するように,頭部と体幹の位置関係を改善していくことが重要であると考えられる.
  • *森川 美紀, 有川 功
    理学療法学Supplement
    2003年 2002 巻 DP245
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】咬合時痛は顎関節運動関与筋と頸椎周辺筋の機能不全が関与する。今回、咬合時痛を訴えた症例に対し頸椎の疼痛発現運動の評価と対応を行った。咀嚼機能不全に関与している頸椎周辺筋を検討する。【方法】対象 2001年5月から2002年10月に当院へ受診した顎関節症例24名中、顎関節の咬合時痛を訴えた9例である。検査1 咬合時痛を訴える患者の頸部の疼痛発現運動方向を確認し、次に疼痛発現運動に関与する筋の触知・圧迫テストを検者の指腹で行う。疼痛が軽減する筋の圧迫部位に直線偏光型近赤外線(東京医研)を出力80%7分間5秒on 2秒offの設定で照射する。照射後、頸椎疼痛動作の確認後、咬合時の疼痛の変化を確認する。疼痛の程度はVisual Analogue Scale値により比較する。検査2 閉口筋に対する触知・圧迫テストを行い、咬合時の疼痛が軽減する筋を確認する。その部位に直線偏光型近赤外線を照射する。【結果】 対象の頸部の疼痛発現運動は健側回旋3名、患側回旋3名、前屈1名、後屈1名であった。回旋動作痛を訴えた症例では回旋方向と同側中斜角筋と反対側胸鎖乳突筋に対する圧迫テストにより疼痛が減少した。顎を引っ込める前屈動作で疼痛発現例は、患側中斜角筋と顎舌骨筋筋腹を触知・圧迫により運動時痛が減少した。他1名は顎を突き出す後屈運動で疼痛が発現した。 本例は
    後頭下筋
    を圧迫しても変化が見られず、対側の中斜角筋を圧迫するテストにより疼痛が減少した。その後、顎関節運動閉口筋である咬筋・側頭筋に対する触知・圧迫テストの有効部位への対応を行った。咬筋への対応は7例、側頭筋への対応は2例、顎関節部への対応は3例であった。すべての症例の咬合時痛は軽快し、数回の治療後、咀嚼時の疼痛は消失した。【検討】 咬合は頭部および頸椎の前屈を伴い行われる。頭頚部の屈筋群は5つに分類する。1 前頭直筋から頭長筋による後頭環椎関節屈曲、2 頭長筋から頸長筋による頸椎前彎消失と固定、 3 胸鎖乳突筋による強力な頭部の前方移動、4 斜角筋群による頸椎前屈の調整、5 舌骨上下筋群による頭部の更なる屈曲。これらの頭頚部の屈筋群は咀嚼筋である咬筋や側頭筋の共同運動筋として作用する。中斜角筋は咀嚼運動に際し頸椎前屈の調整筋として重要である。軸椎後上部の
    後頭下筋
    群と軸椎後下部の頸部伸筋群に対し中斜角筋は前方軸椎横突起に起始し頭頚部の位置的変化のセンサー的役割を果たしている。顎関節症例では中斜角筋は緊張しやすく、機能不全を起こしやすい。【結語】 咬合時痛症例は頚部回旋と前後屈の機能不全を合併する。頚部の回旋・前屈・後屈機能を中斜角筋および胸鎖乳突筋により調整することは顎関節症の咀嚼障害に対して有効である。
  • 松井 猛, 杉本 寛, 丸谷 守保, 山崎 明, 広瀬 好郎, 露木 昭彰, 山崎 博正
    理学療法学Supplement
    1994年 1994.21.2 巻
    発行日: 1994/04/01
    公開日: 2017/07/24
    会議録・要旨集 フリー
  • 辻󠄀井 洋一郎, 小林 絋二, 河上 敬介
    理学療法学Supplement
    1991年 1991.18.1 巻
    発行日: 1991/03/31
    公開日: 2017/07/14
    会議録・要旨集 フリー
  • 平木 治朗, 安井 平吉
    理学療法学Supplement
    1990年 1990.17.1 巻
    発行日: 1990/03/31
    公開日: 2017/07/07
    会議録・要旨集 フリー
  • 重田 直哉
    理学療法学Supplement
    2020年 47S1 巻 P-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    会議録・要旨集 フリー
  • 福本 周市, 大山 史朗, 岩切 友那, 弓削 竣太郎
    理学療法学Supplement
    2020年 47S1 巻 P-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    会議録・要旨集 フリー
  • 平野 幸伸, 加藤 倫卓, 栗田 泰成, 塚本 敏也
    理学療法学
    2014年 41 巻 8 号 639-644
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー
  • 中川 翔太, 小田原 守, 今田 道生, 村野 武志, 山口 祐二, 鶴田 豊, 宮本 恵美, 大塚 裕一
    日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
    2022年 26 巻 1 号 39-46
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    【緒言】胸部食道癌術後長期経過し不良姿勢に起因する嚥下障害患者に対して,理学療法(以下,嚥下理学療法)を行い即時改善が認められた症例を経験したので報告する.

    【症例】70 歳代後半の男性.5 年前に胸部食道癌の手術を施行.食事摂取量低下での低栄養や臥床時間の延長による低活動,嚥下機能低下のため在宅生活困難となり入院.呼吸数は24 回/ 分.筋力は舌骨上筋機能グレード(GS グレード)でGr.2.筋緊張は

    後頭下筋
    群や舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋,大胸筋などが過緊張.関節可動域は頭頸部屈曲位にてオトガイ–胸骨柄間距離9 cm.姿勢は頭部前方位の背臥位にて頭部–ベッド間距離が19 cm,肩甲骨外転位と胸椎後弯増強位は背臥位にて肩峰–ベッド間距離が9 cm.主観的飲み込みやすさに関する質問紙は2.食事摂取量は7 割.食事中の咳込みあり.

    【経過】嚥下理学療法により不良姿勢に対してストレッチやモビライゼーションを施行し,改善効果の持続を目的に筋再教育練習や呼吸練習を行った.単回の介入で,呼吸数は22 回/ 分.筋力はGS グレードでGr.2,筋緊張は上記筋群の過緊張が軽減.関節可動域は頭頸部屈曲位にてオトガイ–胸骨柄間距離9 cm から6 cm に改善.姿勢は頭部–ベッド間距離が19 cm から9 cm,肩峰–ベッド間距離が9 cm から6 cm に改善.主観的飲み込みやすさに関する質問紙は5.食事摂取量は全量摂取.食事中の咳込みなし.

    【考察】関節可動域の拡大と筋緊張の緩和に伴う姿勢変化や呼吸機能向上により嚥下状態が改善し,食事中の咳込みが消失したのではないかと推測した.GS グレードは介入後もGr.2 で変化はなかったが嚥下状態は改善していた.このことから,嚥下機能を低下させている可動域制限や筋長,過緊張などの因子を多角的に評価し,的確な介入を行うことで単回でも嚥下状態の改善を図ることができると考えた.

  • 鈴木 重行
    体力科学
    2015年 64 巻 1 号 13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
  • 山本 将仁, 是澤 和人, 小川 雄大, 廣内 英智, 松永 智, 佐々木 穂高, 小高 研人, 笠原 正彰, 笠原 典夫, 崎山 浩司, 阿部 伸一
    日本口腔インプラント学会誌
    2019年 32 巻 3 号 181-188
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/11/20
    ジャーナル フリー

    日本における超高齢社会の中で,歯科インプラント治療後の管理期間は長期に及び,装着時の患者を取り巻くさまざまな環境は大きく変化していくことも想定しなければならなくなってきた.「患者に寄り添う歯科治療」とは,その長期管理の中で歯科医師・歯科衛生士は「患者の何を理解すべきか」そして「患者の何をチェックすべきか」を機能解剖学的視点から考えてみたい.筋力は45歳位を過ぎると加齢とともに萎縮することが知られている.その理由は個々の筋線維が細くなりながら(タンパク量を減らしながら),筋線維数も減じていくからである.そして高齢者の筋力低下は全身の体軸を歪めていく.頭頸部もこの体全体の姿勢の一部であり,加齢変化による体軸の形態変化が頭位や顎位へ影響を与える可能性を考えていかねばならない.頭位は主に頸部側方から後方の筋群によって決定,維持される.また頸部後方の深層に存在する

    後頭下筋
    群の多くは,頸椎から頭蓋底をつないでおり,頸椎の前彎の消失による頭位の前方への傾斜が,これらの筋の正常なポジションを変えていく.そしてこの形態的・機能的な加齢変化は顎関節にも生じ,顎位に影響を与えることがある.よって超高齢社会を迎えた日本では,口腔内だけではなく全身的な加齢変化をも記録していくことの必要性があると考える.

  • 白井 誠, 米谷 諭, 中塚 久美子, 守屋 智里, 高橋 誠
    理学療法学Supplement
    1992年 1992.19.1 巻
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2017/07/14
    会議録・要旨集 フリー
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