理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP245
会議情報

骨・関節疾患(整形外科疾患)
咬合時痛への頸部周辺筋の関与
*森川 美紀有川 功
著者情報
キーワード: 顎関節症, 咀嚼筋, 中斜角筋
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】咬合時痛は顎関節運動関与筋と頸椎周辺筋の機能不全が関与する。今回、咬合時痛を訴えた症例に対し頸椎の疼痛発現運動の評価と対応を行った。咀嚼機能不全に関与している頸椎周辺筋を検討する。【方法】対象 2001年5月から2002年10月に当院へ受診した顎関節症例24名中、顎関節の咬合時痛を訴えた9例である。検査1 咬合時痛を訴える患者の頸部の疼痛発現運動方向を確認し、次に疼痛発現運動に関与する筋の触知・圧迫テストを検者の指腹で行う。疼痛が軽減する筋の圧迫部位に直線偏光型近赤外線(東京医研)を出力80%7分間5秒on 2秒offの設定で照射する。照射後、頸椎疼痛動作の確認後、咬合時の疼痛の変化を確認する。疼痛の程度はVisual Analogue Scale値により比較する。検査2 閉口筋に対する触知・圧迫テストを行い、咬合時の疼痛が軽減する筋を確認する。その部位に直線偏光型近赤外線を照射する。【結果】 対象の頸部の疼痛発現運動は健側回旋3名、患側回旋3名、前屈1名、後屈1名であった。回旋動作痛を訴えた症例では回旋方向と同側中斜角筋と反対側胸鎖乳突筋に対する圧迫テストにより疼痛が減少した。顎を引っ込める前屈動作で疼痛発現例は、患側中斜角筋と顎舌骨筋筋腹を触知・圧迫により運動時痛が減少した。他1名は顎を突き出す後屈運動で疼痛が発現した。 本例は後頭下筋を圧迫しても変化が見られず、対側の中斜角筋を圧迫するテストにより疼痛が減少した。その後、顎関節運動閉口筋である咬筋・側頭筋に対する触知・圧迫テストの有効部位への対応を行った。咬筋への対応は7例、側頭筋への対応は2例、顎関節部への対応は3例であった。すべての症例の咬合時痛は軽快し、数回の治療後、咀嚼時の疼痛は消失した。【検討】 咬合は頭部および頸椎の前屈を伴い行われる。頭頚部の屈筋群は5つに分類する。1 前頭直筋から頭長筋による後頭環椎関節屈曲、2 頭長筋から頸長筋による頸椎前彎消失と固定、 3 胸鎖乳突筋による強力な頭部の前方移動、4 斜角筋群による頸椎前屈の調整、5 舌骨上下筋群による頭部の更なる屈曲。これらの頭頚部の屈筋群は咀嚼筋である咬筋や側頭筋の共同運動筋として作用する。中斜角筋は咀嚼運動に際し頸椎前屈の調整筋として重要である。軸椎後上部の後頭下筋群と軸椎後下部の頸部伸筋群に対し中斜角筋は前方軸椎横突起に起始し頭頚部の位置的変化のセンサー的役割を果たしている。顎関節症例では中斜角筋は緊張しやすく、機能不全を起こしやすい。【結語】 咬合時痛症例は頚部回旋と前後屈の機能不全を合併する。頚部の回旋・前屈・後屈機能を中斜角筋および胸鎖乳突筋により調整することは顎関節症の咀嚼障害に対して有効である。

著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top