小児は環境依存性であるということと, 小児は発達成長するということの2つは, 小児の
心身症
の診療に当たって特に認識すべきことである. 何故なら,
心身症
はその定義に“身体疾患の中で, その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し, 器質的ないし機能的障害が認められる病態
1) ”とあるように, 環境が深くかかわる病態であり, 育てられつつ育つ存在であるところの小児にとっては, 発達成長障害の徴候でもあるからである.
心身症
は, 生物・心理・社会・生態学biopsychosocioechologicalの疾病モデルでみられる
2) . これを小児の
心身症
で具体的にいうと, 身体-発達心理-家庭-学校-社会のそれぞれに焦点をあててみて, それを生態学的観点で統合的に捉える態度でみることである. これによって, 心身医学的に対象の把握ができる
3) .
小児は環境依存性であるということと, 小児には発達過程があるという2つの特性は, 発症・診断・治療・予後のいづれの段階にも色濃く浮び上がる. そこで
心身症
の症状と環境の関係を力動精神医学的観点で述べ, 家族機能論と精神発達理論を紹介し, 発達指向的精神療法を述べた.
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