コーチングは, 特定の人物により特定の理論をもとに考案されたものではなく, また, 学術界以外の場で発展してきたため, その学術性や効果の実証という点では, 不十分な点が多い. 本稿では, コーチングが医療・健康の臨床の場での実践にとどまらず, 科学的検証に耐えうるレベルのものになるには, 何が必要かを考察した.
最初にコーチングの発展の歴史を概観し, 次に日本の医療・健康分野におけるコーチングの現状を紹介した. 次にコーチングにおけるスキルと理論の関係の現状を分析し, 既存のヘルスコーチングの書籍のうち, 理論やモデルを紹介しているのは40%に過ぎないことを明らかにした. コーチングが医療・健康分野において今後, 学術的に認められ, 発展するためには, 理論やモデルに基づいたコーチングの普及, 指導者のレベルの向上や資格・立場の明確化, コーチング的会話とコーチングの区別などが必要であることを提言した.
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