浮遊粉じん量は室内環境では建築物衛生法により管理基準が定められている。一方外気では環境基本法により環境基準が定められており、更に健康影響への問題からPM2.5の環境基準も設定されている。しかしながら、室内環境においてPM2.5の基準は定められておらず、測定例も少ない。このため当センターでは建築物におけるPM2.5を含めた室内環境中の浮遊粉じんについて実態調査をしている。今回調査において新たな知見が得られたため報告する。
This report shows the result of the study on the indoor environment, characteristics of suspended particulate matter and airborne microbes in four office buildings which adopted the central management type air-conditioning system.
日本においては SPM 濃度に対する規制として、0.15[mg/m3]以下とすることが定められている。その一方で現実の SPM 濃度は 0.008~0.012[mg/m3]程度とほとんどの建物で基準値をクリアしている。通常の検査では午前・午後の 1 回に 5 分程度の計測を行って、その平均値が基準値を下回っていれば適合と判断する場合が多い。しかしこのサンプル数では統計学的には十分なサンプルを得ての判断とは言えない。本報告では SPM 濃度の実測データを用い、その時間的分布をモデル化した。またこの時間的分布に基づいて、逐次検定法による SPM 評価モデルを提案した。モンテカルロ法シミュレーションによりその特性を明らかにし、SPM 基準の測定に適したモデルである事を検証した。
クリプトスポリジウム等の原虫試験のための濃縮法として開発され,海域での特定酵素基質法による大腸菌試験の誤陽性抑止法としても有効なハイドロキシアパタイト粉体ろ過法のろ過性能および大腸菌濃縮法としての性能を評価した.ため池の水を試料にした場合,∅47 ㎜セルロース混合エステルフィルター(孔径0.22または0.45 µm)あるいはポリカーボネートフィルター(0.2 µm)単独で使用した場合と比較して,本法は2~2.5倍の水量のろ過を可能にした.また,添加実験ではろ過後の濃縮物からの高い大腸菌の回収率を,実際の河川水等を用いた大腸菌試験では,通常行われているMF法および混釈培養法と同等かそれ以上の大腸菌数を得ることができた.本法は現在一般に行われている検水量である100 mLを超える容量の試験を容易に行うことを可能にするとともに,適切な濃縮手段のなかったコリラート法などの液体培地を用いた試験に適用できる水の細菌濃縮法であることが示された.
COVID-19は空気感染の可能性も否定されておらず,救急車内の換気効率について検証する必要がある。トヨタ救急車を対象に患者室の空調設定を変え,スモークマシンの煙をPM測定器で測定し比較検討した。実験1:空調設定(風量・向き)7条件下で,車内5カ所でPM値を測定した。平均PM値は,リヤクーラー無使用がもっとも低く(30μg/m3),風量強・風向下向きがもっとも高かった(331.2μg/m3)。基準値までの平均時間は,風量強・風向上向きが最短(90秒)で,風量中・風向下向きが最長(300秒以上)であった。平均PM値と平均時間からリヤクーラー無使用が効率のよい換気であった。実験2:処置などが可能な間隙のある間仕切りカーテンをメインストレッチャーの天井から設置し実験1と同様に測定した結果,PM値の低下時間は短縮した。結果:換気効率は空調設定に大きく影響する。空調の使用は空気を拡散し滞留させるため,間仕切りカーテンを設置することで効率的な換気が可能となる。
2016年に制定された国際規格ISO16890シリーズを基に,一般換気用エアフィルタのJIS規格であるJIS B 9908が2019年に制定され,新たに粒子状物質捕集率J-ePMxの概念が導入された.フィルタの分類方法が従来と大きく変わっているため,市場の混乱が予想される.JIS規格の内容,規格変更に至った経緯と問題点,これまでのJIS規格の変遷と2019年版による分類を紹介するほか,既存の海外規格との比較,現在の運用の状況と今後の課題について解説する.
第1報では,高齢者福祉施設内の微生物汚染実態を詳細に調査し,多数の人が集まるデイルーム内の浮遊細菌濃度と浮遊真菌濃度の1日の変動幅が2〜3桁に達しており,Staphylococcus hominis, S. epidermidis, Serratia marcescens, Corynebacterium xerosis, C.freneyi, Acinetobacter baumannii, A. calcoaceticus, Stenotrophomonas maltophiliaなど多種の日和見感染菌が低くない割合で検出された。本報では,高齢者福祉施設内の環境を詳細に把握するために,第1報と同じ調査対象における温湿度,二酸化炭素(CO2)濃度の長期間連続測定を行った。また,高齢者福祉施設の環境管理について,これまでのアンケート調査結果を検討した。本研究より,次の事柄が明らかになった。①室内温度は総じて良好であったが,室内温度が急激に低下する居室があり,窓開け換気を行う時間帯に対する配慮が必要である。②相対湿度は,1施設の食堂(KT)と居室(HF)を除いた6室が冬に向けて低下しつつあり,その中央値が12月または1月に入ってから40%を下回った高齢者福祉施設における加湿設備の充実と適正な管理が必要である。③CO2濃度については,その中央値が総じて良好であったが,全ての対象室の最大値が1000ppmを大きく上回った。多数の人が集まるデイルーム等においては換気量の確保が必要である。④環境管理については,加湿設備の充実,必要換気量の確保,および適正な換気運転が必要で,そのためにも管理体制,とりわけ設備管理技術者による適正な管理が必要である。
オフィスビルにおける空中浮遊微生物を遺伝子解析により同定し,オフィスビル内における室内浮遊微生物の実態を調査した。 オフィス室内では,人由来の細菌の占める割合が高い傾向を示し,浮遊細菌の主な発生源は,室内にあること,特に,室内居住者であることが裏付けられた。室内浮遊真菌濃度は,ビルDにおいて,建築学会提案の管理基準値を上回った。室内で確認された真菌の種類が,給気中で確認されたものとほぼ同じであり,空調機内に汚染源があると推察された。
白色LEDの発光方式として,青色LED+黄色発光蛍光体は発光効率と製造コストの点で優れているため現在最も普及している。一方,この発光方式では青色と黄色に偏った分光分布となり,演色性が低いという課題がある。近年,高演色性を特徴とする高演色LEDと太陽光に近い分光特性を持つ太陽光LEDが製品化されている。各LED照明は大半が可視光内にあり,近紫外線をほとんど含まないため,昆虫の誘引を抑制できると考えられている。しかしながら,高演色LEDと太陽光LEDの防虫効果については十分に検討されていない。本研究は,白色LED,高演色LED,太陽光タイプLED,および試作防虫LEDの誘虫性能を評価するために室内試験を行った。試験にはイエバエとクサビノミバエを用いた。高演色LEDは,白色LEDに比べてイエバエの捕獲数が有意に多かった。白色LEDに比べ,太陽光LEDで捕獲されたイエバエとクサビノミバエの数が有意に多かった。イエバエの捕獲数は,高演色LEDよりも太陽光LEDの方が有意に多かった。白色LEDで捕獲されたイエバエは,試作防虫LEDで捕獲されたイエバエよりも有意に多かった。この結果から,高演色LEDと太陽光LEDは,白色LEDよりも高い誘虫力を持つことがわかった。一方,試作防虫LEDは白色LEDよりも誘引力が低い。これらの結果から,昆虫の誘引性は紫外線だけでなく可視光にも影響されることが示唆された。
日本では、建築物衛生法にて建築室内の浮遊粉じん濃度は 0.15mg/m3 以下と定められ、その濃度測定には光散乱式粉じん計が広く用いられている。光散乱式粉じん計は定期的な較正が必要であり、その際粒径0.3μm のステアリン酸が用いられるが、この粒子は単分散であること、粒径が小さい事に懸念を持った。本報告では、較正に用いる粒子をステアリン酸 1.0μm、アリゾナダスト、関東ロームに代えて較正を行った。また、その特性を把握するために実空間中で測定を行った。その結果、1) ステアリン酸 0.3μm 単分散粒子だと実際の濃度には合わない、2) アリゾナダストだと、ばらつきが大きい上に測定結果も現実と合わなくなる、3) 関東ロームだと、ばらつきが十分小さく測定結果も現実に近い値が得られる事を確認した。
本報告は浮遊粒子状物質の粒径別個数濃度の関係を対象に行ったものである。一般的な室内の空気中には 10nm から数 10μm に至るまで、3桁以上の粒径分布幅に、個数濃度で7桁近くに広がった形で浮遊微粒子が存在する。そのため、浮遊微 粒子の全体像を観測する事が難しかった。本報告においては、可搬型 SMPS(Scanning Mobility Particle Analyzer)および LPC(Laser Particle Counter)を用いて浮遊粒子状物質の分布を計測し、10nm〜10µm までの広範囲な浮遊粒子状物質の粒径別個数濃度分布を把握した。
当院は,院内感染対策の一環として院内全フロアの給水を対象に年4回レジオネラ定期環境調査を行っている.救急センターのある1階フロアの給水からLegionella pneumophila serogroup 5が検出され,滞留水対策を講じたが繰り返し検出された.レジオネラ属菌の定着による系統的な汚染を疑い,救急センターエリア全給水箇所を調査し汚染の原因究明と対策を行った.
12箇所でL. pneumophila SG 5が検出された.同時測定した水温が7箇所で30℃以上に上昇していた.配管経路が地下の機械室・ボイラー室を経由しており,水温上昇の原因と考えられた.対策として配管経路の改修工事を行い,水温を下げることによりレジオネラによる系統的汚染を制御できた.撤去した給水管の継手は内腔に錆が堆積しており,レジオネラ増殖の温床と考えられた.
今回,レジオネラ定期環境調査を起点に給水の系統的レジオネラ汚染に対し,迅速な対策をとり,これを終息することができた.当院は,今日まで院内感染によるレジオネラ症の報告はないが,発生した場合患者の不利益となるばかりでなく病院経営への影響が大きい.病院管理者は危機管理の一環として,給水系のレジオネラ属菌の検出状況を日常的に監視し,早期に検出限界以下にするための対策を通じ,レジオネラ症の発生リスクの低減に努める必要があると考える.
当院は築25年,地下1階,地上10階の鉄骨鉄筋コンクリート造で病床数475床の地域中核病院である.Evans症候群のためプレドニゾロン45 mg/日にて入院加療中の70歳代女性が本剤投与開始9日目に発熱した.胸部X線写真上の浸潤影に加え尿中レジオネラ抗原検査が陽性となりレジオネラ肺炎と診断された.院内感染を疑い給水・給湯系の調査をしたところ,5~10階の病棟給水栓全てからLegionella pneumophila serogroup 1が検出され,患者喀痰から検出された菌の遺伝子型も一致した.院内感染事例として全ての給水栓で熱湯フラッシング,シャワーホースの消毒・交換,病棟のケア制限などを行った.フラッシング後に任意の82か所で培養施行したところ,分岐された配管に気付いてなかった1か所で持続的に菌が検出された.溜まり水となっていた配管を通るようにフラッシングを行ったところ陰性を確認できた.また転院・退院患者の追跡調査,病院職員の健康調査なども行ったが当該患者以外で新規患者を認めなかった.しかしその後の定期検査では使用頻度が少ない給水栓で再度レジオネラ菌が検出され,バイオフィルム形成による菌の残存によるものと考えられた.フラッシングで陰性化を確認した後もレジオネラ菌が一度検出された限りは配管内でのバイオフィルム形成を念頭においた長期的な対応が必要であり,この経験をもとに当院の対応マニュアルを作成した.
The indoor air environment was analyzed using the measurement data in 42 office buildings. The nonconformity rates of CO2 concentrations were high in winter and summer and those of humidity in winter. One factor in causing the nonconformity rates in semi-large and little buildings with separate air-conditioners is that ventilation and humidification are not well controlled there.
建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく建築物環境衛生管理におけるデジタル技術の活用の可能性を探る調査を行ってる。本報では、4種類のCO2センサーを用いた中期連続測定の結果、センサー間の精度の比較、さらに法定点検方法による測定結果との比較について報告した。
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