日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
報告
当院におけるレジオネラ定期環境調査とLegionella pneumophila serogroup 5による給水汚染対策
伏見 華奈土屋 憲池ヶ谷 佳寿子加瀬澤 友梨齋藤 敦子更谷 和真徳濱 潤一原田 晴司髙森 康次柴田 洋増田 昌文
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 33 巻 2 号 p. 56-61

詳細
抄録

当院は,院内感染対策の一環として院内全フロアの給水を対象に年4回レジオネラ定期環境調査を行っている.救急センターのある1階フロアの給水からLegionella pneumophila serogroup 5が検出され,滞留水対策を講じたが繰り返し検出された.レジオネラ属菌の定着による系統的な汚染を疑い,救急センターエリア全給水箇所を調査し汚染の原因究明と対策を行った.

12箇所でL. pneumophila SG 5が検出された.同時測定した水温が7箇所で30℃以上に上昇していた.配管経路が地下の機械室・ボイラー室を経由しており,水温上昇の原因と考えられた.対策として配管経路の改修工事を行い,水温を下げることによりレジオネラによる系統的汚染を制御できた.撤去した給水管の継手は内腔に錆が堆積しており,レジオネラ増殖の温床と考えられた.

今回,レジオネラ定期環境調査を起点に給水の系統的レジオネラ汚染に対し,迅速な対策をとり,これを終息することができた.当院は,今日まで院内感染によるレジオネラ症の報告はないが,発生した場合患者の不利益となるばかりでなく病院経営への影響が大きい.病院管理者は危機管理の一環として,給水系のレジオネラ属菌の検出状況を日常的に監視し,早期に検出限界以下にするための対策を通じ,レジオネラ症の発生リスクの低減に努める必要があると考える.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top