日本脳炎 (JE) ウイルスの免疫学的性状を解析するために, 細胞融合法により, 赤血球凝集抑制 (HI)試験でJEウイルス上山株に対してHI反応性を示すモノクローナル抗体 (KAMIMA) を作製した. JEウイルスのみにHI反応性を示し, Murray Valley脳炎, West Nile, St. Louis脳炎, Russian springsummer脳炎, Dengue-1ウイルスの5種のFlavivirusにHI反応性を示さない抗体を15系統作製した.それらのうち, HI反応性が異なる5系統の抗体を用いて, 1935年から1979年までに国内各地で分離された21株と国外で分離された4株を合わせた合計25株のJEウイルスに対してHI試験を行い, 反応パターンにより血清学的分類を行った. その結果, A群: 上山, Sekiya, 望月, 西園, Sasazaki, 三重44-1, 福岡7101, 福岡7202, 福岡7309, 福岡7311, 福岡7452, 福岡7463, 福岡7506, 熊本80679, ChiangMai, JaGAr 02の16株, B群: 中山-RFVL, 中山-予研の2株, C群: 中山-薬検, Kalinina, G-1 late, JaGAr01, 北京1, 691004の6株, D群: Muar株に大別された. この所見を, 抗中山-RFVL株モノクローナル抗体による分類と比較すると, JEウイルス25株のうち22株に血清学的分類の一致がみられた.
モノクローナル抗体の生物学的活性の検討では, HI価, ELISA価, 中和抗体価の間には, 相関はみられなかった. 中和活性と感染防御能との間には, 中和活性を示す抗体は感染防御効果を示したが, 中和活性を示さない抗体のなかにも感染防御効果を示す抗体があった.
また, SDS-PAGEおよび免疫プロット法によるモノクローナル抗体の対応抗原の解析では, 3系統のモノクローナル抗体が非還元下で52.0kD, 還元下で53.0kDに, 5系統のモノクローナル抗体が非還元下でのみ52.0KDに, 7系統のモノクロナール抗体が非還元下, 還元下ともに14.5kDに反応した.
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