本研究は,振動計測において,加速度と蓄積疲労を正確に計測可能で,データ量を最少化できる最適サンプリング条件を明らかにすることを目的とした.数値解析ソフトウェアMATLABを用いて,ゼロクロスピークカウント法により加速度時刻歴データからピーク値を検出,リスト化するプログラムを作成した.JIS Z 0200:2013のPSDプロファイルから尖度値を変えて(3.0, 3.5, 4.0, 4.5, 5.0)生成させた0.1 ms間隔の時刻歴データを用い,さらに間引き処理(1/2,1/4,1/8,1/16,1/32,1/64)を追加することで,疑似的にサンプリング間隔の異なるデータを取得した.作成したプログラムをこれらのデータに適用し,得られた加速度ピーク値から蓄積疲労を算出し,オリジナルと間引き後のデータセットとの間で有意差検定を行った.両者間で差がない場合を,適切なサンプリング間隔とみなした.加速係数が2.0で蓄積疲労を正確に評価可能なサンプリング間隔は,0.8 ms(1,250 Hz)であった.このサンプリング間隔は,サンプリング定理に基づく200 Hzまでのデータを扱う際のサンプリング条件(<2.5 ms(>400 Hz))の1/3以下であり,サンプリング定理より高速なサンプリングでの振動計測が必要であることが示された.
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