1. 容積2.43m
3の大型コンクリート鉢に植えたリンゴ(紅玉) について, 土壌湿度を容水量の80~75%(湿潤区), 70~55% (半湿潤区), 45% (乾燥区) および30% (極乾燥区) にそれぞれ調節した4試験区を設け, 土壌湿度が樹体の生長, 収量, 果実の品質, 葉および果実の形態, 光合成, 蒸散作用および葉内要素含量に及ぼす影響を調査した。
2. 土壌湿度の低い区ほど, 樹体とくに地上部の生育は顕著に劣つた。収量および果実の大きさもまた, 土壌湿度の低い区ほど減少した。
3. 果実の着色は, 湿潤区では他の3区にくらべて明らかに劣つた。果実の糖分含量も土壌湿度の高い区ほど低かつた。極乾燥区の果実にはぱりつとした新鮮さがなく, 結局, 食味は乾燥区の果実が最もすぐれた。
4. 夏期における果径および幹周の日変化は, 両者とも, 昼間収縮して夜間膨大した。土壌湿度の高い区ほど, 1果あたりの葉数が格段に多かつたために, 果径の日変化における較差が大であつた。
5. 土壌湿度の低い区の葉ほど, 面積, 厚さ, 細胞の大きさおよび細胞間隙が小であり, クチクラが厚くまた気孔の密度が高かつた。また, 土壌湿度の低い区の果実ほど, 果皮が厚く, 果肉の細胞および細胞間隙が小さく, 細胞膜が厚くそして果肉硬度が高かつた。果肉細胞の数は, 各区の間に差がなかつた。
6. 極乾燥区では夏期に, 基部の古い葉が黄変して落葉するものが多かつた。
7. 極乾燥区の果実には, 縮果病 (果心コルク) がかなり発生し, 果肉中のホウ含量も低かつた。また極乾燥区の果実には, 貯蔵中にゴム病が発生した。
8. 葉の見かけの光合成は, 湿潤区および半湿潤区の間には大差がなく, 土壌湿度がそれ以下になるにつれて極端に劣つた。蒸散作用は, 土壌湿度の低い区ほど顕著に低下した。
9. 葉内の養分要素含量は, 土壌湿度の低い区ほど, リンおよびホウの含量が顕著に低かつた。
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