複層林の上木間伐にともなう下木損傷を軽減する作業方法を検討するため,カラマツ-ヒノキ点状複層林で調査を実施した。伐倒作業にともなう下木損傷率を伐倒方向で比較したところ,谷側伐倒区域の下木損傷は23.2%であったの対し,山側伐倒区域は10.4%と下木損傷率は半減した。しかし,伐倒前に樹冠長の40%程度の枝打ちを行ったことによる下木損傷軽減効果を,同じ伐倒方向で枝打ちを実施しなかった場合と比較したところ,効果は明確ではなかった。また,伐倒した上木の樹冠内に入った下木を対象に損傷率(樹冠内損傷率)を調査したところ,山側伐倒と谷側伐倒の間に有意差が認められたが,同じ伐倒方向で枝打ちを実施した場合と実施しなかった場合では有意差は認められなかった。樹冠内損傷率は上木が地面に到達するまでの回転角度と関係があり,傾斜30度の斜面で伐倒作業を行った場合,谷側伐倒では樹冠内下木の49.0%に損傷が発生するが,山側伐倒では8.8%に軽減できると予想できた。今回の調査結果から山側伐倒は谷側伐倒と比較して下木損傷を軽減できる作業方法と認められたが,樹冠長の40%程度の枝打ち作業は下木損傷を軽減する作業方法とはいえなかった。
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