本研究では,観察した視覚情報と事前知識とが動作理解に及ぼす関係を明らかにするために,3種類の手の動き(積木の回転,持上げ,運ぶ)を推定する課題(Chambon et al., 2011)を用いて,視覚情報として手の運動動画の呈示時間(長中短)と,事前知識として動画の呈示頻度(高低)とを操作し,手の動きの推定に要する判断時間を検討した。参加者は視覚情報量が低下するほど手の動きの推定が困難になり,事前知識に依存した推定反応を必要とし,呈示頻度の高い動画に対する判断時間が短縮されると予想された。特に本研究では,動画の呈示頻度の高低に対する参加者の気づきが,動作主の行為意図の理解に及ぼす影響を検討した。その結果,呈示時間が短くなると判断時間は有意に伸長するが,動画の呈示頻度を操作された条件で,生じやすい動作に対する判断時間は,生じにくい動作よりも短縮した。さらに呈示頻度の違いへの気づきの有無による判断時間の変化が示唆された。