愛媛県重信川流域の6つの泉において2000年6月から10月にかけて4回,動植物プランクトン採集と環境要素の測定を行った。泉の栄養塩濃度は中~富栄養のレベルであったが,クロロフィルa濃度は4泉が平均1.0μgL
-1以下で,貧栄養湖の値に相当した。植物プランクトンは細胞密度が低い場合はFragilariaを中心に珪藻類が優占したが,高くなると珪藻類とともにクラミドモナス科の緑藻類や黄色鞭毛藻類Dinbryonが優占した。動物プランクトンについては原生動物とワムシ類が通常優占し,密度はそれぞれ4.6~47.9 inds.L
-1,2.8~30.3 inds.L
-1で,貧栄養湖の密度より少なかった。浮遊性カイアシ類はTropocyclops prasinusのみで,植物プランクトンの多い泉にだけ出現した。吸虫類のセルカリア幼生が多量に出現する泉があった(最大299.1 inds.L
-1)。水位の下がった泉,すなわち流入量が少なく滞留時間が長いと考えられる泉ほどプランクトンが多かった。このことは,泉のプランクトン密度の増加が地下水流入による水の交換速度によって制限されていることを示唆している。
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