1.甘藷を皮層部と内部にわけて,それぞれを水蒸気蒸溜し,溜出液を集めた.内部からの溜出液が温和な香味を示すのに対して,皮層部からのそれは特異的な刺戟臭味を示した.
それぞれの溜出液について,主要成分を主としてGLCでしらべた結果,皮層部溜出液に特徴的な成分として,カルボニル化合物,イポメアマロン,高級炭化水素などが見出された.
2.カルボニル化合物として,アセトアルデヒドを主体とし,ほかにC
1,C
3,C
4のアルデヒドが2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンとして分離同定された.
3. 中性化合物の最も主要なものとしてイポメアマロンを同定し,GC-MSによる開裂パターンから確認した.イポメアマロンは,本来,健全な甘藷には認められない,しかし,単に甘藷相互の接触により軽い擦れ合いを経た程度の,一見健全と見なされる甘藷においては,イポメアマ官ンが生成されていることをモデル実験により確かめ,溜出液中に90mg%相当量(甘藷当り)が移行することを明らかにした.
4. GC-MSにより,ドコサン,トリコサンのほか,2,3の高級炭化水素の存在や,サビネン・ハイドレート,サビネンなどのテルペン関連体合物が検知され,また,フタル酸系化合物の存在も推定された.
5. 脂肪酸組成には,皮層部,内部いずれも大差が認められなかった.
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