Is型大腸腫瘍76病変を対象とし,その組織異型度(低および高異型性腫瘍)と内視鏡所見,病変の局在,性,年齢等との関連性を統計手法によって検討し,組織異型度をより正確に反映する診断指標を検討した.まず,設定した諸因子と組織異型度との独立性をX2乗検定によって検討し,この検定によって5%以下の危険率で有意と判定された7つの内視鏡所見(大きさ,陥凹,緊満感,びらん,分葉溝の消失,白斑,ダルマ型)について数値を振り分け,組織異型度と内視鏡所見,および内視鏡所見同士の相関係数をPearson法によって求めたところ,組織異型度との相関係数は分葉溝の消失,緊満感が0,58と高く,陥凹は0.4と低かった.更に,数値化した内視鏡所見を説明変数,組織異型度を応答変数としてロジスティック回帰による多変量解析を試みたところ,組織異型度が低異型性から高異型性へと診断されるオッズ比は陥凹が27倍・緊満感が5.3倍,びらん3.7倍,大きさが3.6倍と計算された. 以上の結果から,Isポリープにおいては局在,色調は異型度の診断には重要でなく,陥凹があればかなり強く高異型性腫瘍を疑うべきであり,緊満感の高い病変においても同様と考えられた.また,緊満感と分葉溝の消失とは相互の相関性が高いが,分葉溝の消失を認めても緊満感を示さない場合には高異型性腫瘍の可能性は低いと考えられた.また,びらんを有する病変や大型の病変についても高異型性腫瘍の可能性を考慮して臨床的取り扱いを決定すべきである.
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