10年後の三重県では乳幼児の人口や妊娠適齢期の女性人口が減少し, 少子少産化に一層の拍車がかかると推測されるため, 将来のhuman resourceである新生児の後遺症なき生存(intact survival)を獲得する目的で, 新生児救急車すくすく号や周産期医療情報ネットワークが整備された. 今回はその成果を総括した. 平成15年4月から平成18年3月までの過去3年間のすくすく号による新生児搬送は274回で, 延べ274名の新生児を搬送した. このうち4割近くの症例は人工呼吸や気管内挿管などの呼吸管理が必要であった. また, すくすく号で搬送された児は, 一般救急車で搬送された児よりApgar scoreが低くより重篤であったが, 搬送後の血液ガス所見には差がなく, ドクターカーによる搬送中の治療が奏功したものと思われた. 一方, 緊急母体搬送で出生した児は在胎週数が若く, 非常に重篤な出生であったことがうかがえた. 平成17年1月1日から平成17年12月31日までの間に三重県下5つの総合および地域周産期母子医療センターに入院し治療された超低出生体重児, 極低出生体重児, 低出生体重児, 病的新生児の死亡率はそれぞれ, 20%, 1.9%, 0.6%, 0.4%であった. 県下全体では879例の新生児が5つの周産期母子医療センターに入院し, 187例が人工i換気を受け, 13例(1.5%)が死亡した. 他方, 三重県における乳児死亡率, 新生児死亡率, 早期新生児死亡率は平成15年頃より徐々に改善し, 平成16年には全国平均を下回るようになった. 三重県では全県挙げて出生児のintact survivalを目指している.
抄録全体を表示