【目的】
第14期中央教育審議会答申は高校教育の諸制度についての方向性を示唆しし、それ以降、高校教育改革が急激に進んだ。一方、我が国において私立高校は、国公立高校と並んで、学校教育制度の一翼を担っている。しかし、高校教育改革の中で私立高校における家庭科教育を検討した報告はまだない。
そこで、本研究はかつて公立高校の家庭学科・学校が30近くありながら、現在は4校3学科となっている新潟県(小高他,2009)において、私立高校における家庭科教育がどのように位置づけられ、どのような状況に直面しているのかを明らかにすることを目的とする。
【方法】
新潟県私立高校全18校の2009年度学校要覧・学校案内及びホームページ掲載内容を収集し、教育課程及び学科・コースの設置内容などを分析した。
【結果】
(1)課程・学科・コースの設置状況
18校中15校が全日制であり、そのうち12校が普通科のみ、普通科・食物科、普通科・生活服飾科、普通科・衛生看護科を設置する高校が各1校であった。なお、生活服飾科は2009年度入学生を最後に募集停止となっていた。18校中3校は単位制、単位制・通信制、単位制による通信制が各1校であった。また、全18校に普通科が設置されていた。18校中15校の普通科では1年次から複数のコースが設置されており、「進学」が共通するキーワードであった。
(2)必修家庭科の設定状況
全日制15校の普通科では、10校が家庭基礎、2校が家庭総合、3校がコースにより、それらのいずれかであった。家庭基礎はすべて2単位であるが、その履修学年は学校により異なり、1単位ずつ2年間での履修という学校が1校あった。必修が家庭総合である2校のうち1校は、生徒の性別により履修単位が異なっており、もう1校は標準単位数に満たない3単位であった。普通科のコースによって、家庭総合を設置している学校の中には、1年次2単位、3年次2単位という、連続しない学年への設定があった。食物科及び生活服飾科は家庭総合4単位であり、衛生看護科は家庭基礎2単位であった。また、全日制以外の高校は、すべて家庭総合4単位であった。
(3)選択家庭科の設定状況
選択科目としては、普通科の「進学」を最重要視しない2コースにおいてフードデザイン、発達と保育やデザインと服飾・住生活、家庭看護・基礎という学校設定科目が設定されていた。また、この2校は現在または以前に家庭学科を設置していた学校であった。
(4)必修科目・選択科目以外における家庭科の位置づけ
家庭科の位置づけとしては次の3ケースを挙げることができる。第1は食物科設置校であり、資格取得と職業に直結、第2は講座という名称により教養の醸成を志向、第3は、卒業研究への発展に結びつけるケースである。
【まとめ】
以上の結果から、新潟県私立高校においては、家庭学科の減少及び課程・学科・コースによって必修家庭科の科目・設置学年・履修単位数が異なることが明らかになった。家庭科が縮小の中、あるいは同一校にも関わらず異なる必修科目・学年・履修単位のもとに授業を行っている教員はどのような課題を抱えているのだろうか。それらを明らかにし、解決方法を探ることが今度の課題である。
小高さほみ他(2009)『高校教育改革の「多様化」における家庭科の課題』日本家庭科教育学会第52回大会要旨集
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