抄録
【問題設定の背景と目的】
1990年代以降の高校教育改革における家庭科の動向と課題について、昨年の本学会大会で報告した(小高他、2009)。その際、特色ある3都県の動向から、高校改革の「多様化」という再編成の過程で、普通教科「家庭」では「家庭基礎」2単位の履修が進んでいること、つまり、家庭科の履修の実態が大幅な単位減となっていること、また専門教育の家庭科においても縮小の傾向があり、家庭科は危機に直面していることを明らかにした。
本報告は、さらに、3都県のなかから、神奈川県の県立高校の場合を事例として、高校改革を背景にして、高校の教育課程に、必履修の普通教科「家庭」および専門教科「家庭」や「家庭」に関する学校設定科目などの位置づき方がどのように変化してきたかについて明らかにし、家庭科が直面している課題を探ることを目的とする。
神奈川県では、1973年度から始まる「高校百校新設計画」において普通高校を中心に高校が新設され、県立高校は1987年度には165校までになった。鈴木・尾嶋(1996,2002)は、この165校を含めた県内の公立高校を対象に、家庭科の男女共学実施直前の1993年12月、さらに改訂学習指導要領が告示される直前の1999年2~3月に、家庭科の履修状況に関する調査を行い、ほとんどの高校で「家庭一般」4単位が履修されること、改訂学習指導要領では8割の教師が「家庭総合」4単位を履修させたいと希望していることなどを明らかにした。ところで神奈川県の高校改革は、2000年度から10年計画ですすめられ(「県立高校改革推進計画」)、2008年度には147校(内、定時制併設18校、定時制と通信制併設1校、通信制単独校1校)へと再編統合された。その中には、単位制および総合学科の高校が増加した。
【方法】
神奈川県の高校改革がほぼ終わりかけた2008年度に設置されていた県立高校の、2004年度以降の「学校要覧」に掲載されている教育課程、学校規模、家庭科教員の配置状況等について分析する。「学校要覧」は、神奈川県立図書館に所蔵されているものを閲覧した。
【結果および考察】
2008年度に設置されている全日制・学年制の普通科108校と専門学科17校の場合、普通教科「家庭」の科目は、「家庭総合」4単位が50%、「家庭総合」3単位が14%、「家庭基礎」2単位が31%、コースや系によって「家庭総合」4単位と「家庭基礎」2単位のように区別している高校が4%であった。定時制では「家庭基礎」が多くなっている。単位制の高校では、「家庭総合」と「家庭基礎」など2科目以上が置かれていることが多い。2003年度入学生から15%校で「家庭総合」を3単位とし、18%で「家庭基礎」2単位として以降、減単する高校が徐々に加わってきた。一方08年度、09年度に「家庭総合」4単位に増加させている高校も数校みられた。2003年度入学生以降は、それ以前の「食物」「被服」「保育」などに替えて「フードデザイン」「発達と保育」「服飾文化」「被服製作」などを、3年次に置いている高校が多い。以上のように、高校改革を背景にして、教育課程における家庭科の位置づけは大きく変化している。
引用文献
鈴木敏子・尾嶋由紀子(1996)「高等学校1994年度入学生の教育課程におけ る家庭科―神奈川県と三重県―」、『横浜国立大学教育紀要』No.36、72-90
鈴木敏子・尾嶋由紀子(2002)「公立高等学校の教育課程における家庭科の位置づけの実態と家庭科教師の意見」、『年報・家庭科教育研究』(大学家庭科教育研究会)第28集、20-32
小高さほみ他、(2009)「高校教育改革の『多様化』における家庭科の課題」『第52回日本家庭科教育学会大会要旨集』