抄録
【課題設定の背景と目的】1999年改訂の高等学校学習指導要領(2003年度入学生から実施)で2単位の「家庭基礎」が設定され、以来、家庭科の履修単位減が懸念されている。神奈川県立高校の場合、’09年度に設置されていた全日制/学年制の普通科のある高校112校では、’02年度入学生にはほとんどが「家庭一般」4単位履修としていたが、’03年度入学生の教育課程では「家庭総合」4単位は61%止まり(「家庭総合」3単位が19%)、’09年入学度生になると47%に低下する一方、「家庭基礎」2単位が20%から35%へと増大したこと、ただ、選択科目に専門科目を置く高校が少なからずあることを、第53回大会で報告した。
ところでこの時期は、産業主義による高校「多様化」政策から市場原理・新自由主義下における高校「多様化」政策へと舵を切った1991年の中教審答申に端を発する高校改革が全国的に本格化する時期と重なる。神奈川県においては、2000年度から’09年度に「県立高校改革推進計画」に取り組まれ、1973~87年度の「高校百校新設計画」で設置された100校(多くは普通高校)のうち40校近くが再編され、推進計画策定時の県立高校166校から143校になった。同時に、「活力と魅力ある県立高校をめざして」をスローガンに、「新しいタイプ」の高校の設置など、高校は実に新たな「多様化」を呈している。また’05年度入学者選抜から、通学区域(学区)が撤廃された。
国の教育政策の影響を受けつつ、高校設置の歴史的状況に特徴のある神奈川県を事例として、「多様化」した高校全体を見渡して教育課程における家庭科の位置づけについて明らかにすることを目的とする。そして’09年改訂学習指導要領実施へ向けての課題についても考えたい。
【方法】
分析する高校の種類と数:2000年度から10か年計画で始まった神奈川県の「県立高校改革推進計画」の結果、’09年度に設置されている県立の全日制高校143校の内、学年制の専門高校17校(内1校は普通科もある総合校)および単位制による普通科高校9校、総合学科高校10校、専門高校5校、さらに定時制課程19校(全日制と併設で、内訳は、学年制の普通科7校と専門学科3校、単位制の普通科4校、総合学科4校、専門学科1校)である。
分析資料と項目:2004年度以降の各高校の「学校要覧」から、教育課程、学校の沿革、学校規模、家庭科教員の配置状況等。
【結果】
学年制の専門高校:’03年度以来、「家庭総合」4単位の必履修がほぼ維持され、履修学年を2・3年生にする特徴がみられ、しかし選択科目に家庭科の専門科目を置いている学校は少ない。つまり、専門高校の教育課程には、それぞれの専門教科・科目の配置と関係して家庭科が位置づけられているといえる。
単位制の高校:必履修の家庭科は、「家庭基礎」「家庭総合」「生活技術」(標準単位数は順に2、4、4)の3科目から、あるいは前2科目から1科目を選択するようにしている場合が多い。普通科では系が、総合学科では系列がいくつか設定され、その中にはたいてい生活に関わるものがあり、その系や系列の選択科目として家庭科の専門科目や学校設定科目が複数置かれている。一例をあげると、’04年度に2校の普通高校を再編統合したA普通科高校の場合、必履修科目は「家庭基礎」2単位か「家庭総合」4単位とし、7つの系の内の生活・福祉系の選択科目に「フードデザイン」「調理」「被服製作」「服飾手芸」「発達と保育」「児童文化」がある。’08年度に2校の普通高校を再編統合したB総合学科高校の場合、必履修科目は3科目からの1科目選択とし、6つの系列の内の生活福祉系列の基礎科目に「発達と保育」と「生活文化」(学校設定科目)、発展科目に「フードデザイン」と「フッションデザイン」(学校設定科目)を置いている。
神奈川県立高校には家庭に関する学科は設置されてこなかったが、21世紀の高校改革によって再編された高校の教育課程に生活に関する科目がかなりみられることをどう評価し、発展させていくか課題である。