単科の精神病院である昭和大学付属烏山病院 (精神病院群) と総合病院としての昭和大学病院精神科 (大学病院群) において, 5年以上観察し得た, 初診時までに治療経験のない通院分裂病患者について対比して調査した結果, 以下の点が明かとなった.1) 両群間には社会適応度に差はなく, 良好な社会適応を示しているものが全体のほぼ2/3を占めていた.しかし, 精神症状評価点でみると大学病院群の方が精神症状の残遺の程度が少なかった.2) 精神病院群は大学病院群よりも長期観察群が多く, 発病年齢が低く, 入院同数, 総入院期間および1回当たりの入院期間が多く, 入院歴のない患者が少なく, 発病から受診までの期間が長かった.3) 入院歴のあるものについては両群ともに経過の前半における入院が多く, 最終社会生活維持期間の平均は約10年であった.4) 初発時症状別では妄想のみの群が大学病院群に多かったが, 他の症状群区分には有意差はなかった.5) 家族状況には有意差はなく, 80%以上が家族と同居していた.6) 就業状況, 自給率などの自活力において有意差はなかったが, 精神病院群がやや劣っていた.7) 両施設受診まで未治療であった.長期観察をしえた通院分裂病における経過と予後は全体的には良好群で占められているが, これらは精神病院群を中心とする一群と, 大学病院群を中心とし, さらに精神病院群にも少なからず存在するいわゆる軽症型の一群に二分される可能性が示唆された.そしてこのような軽症型の一群が無視し得ない程度に存在していることは現在における分裂病の軽症化の現れの一端を示しているものと考えられた.
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