目的:児が遺伝学的検査を受検し、その結果開示を受けた母親の経験を明らかにし、母親を支援するための遺伝看護実践への示唆を得ることを目的とする。 方法:遺伝学的検査を受けた経験のある児をフォローする医療福祉施設と家族会の協力を得て、児の母親13名に半構成的インタビューを個別に実施した。得られたデータは質的記述的に分析し、コード化、カテゴリー化を行った。
結果:母親13名を分析対象とした。母親は出生後の児の状況等から【子どもには何かある】と感じ、医師より児の遺伝性疾患の可能性や検査の説明後に【不安な思いを一人背負い込む】【インターネット情報に翻弄される】経験をしていた。なかには【子どもに何かあっても私には育てられる】【検査へ期待を抱く】母親もいた。結果開示後【診断を受けても晴れない気持ち】を感じ、相談先がなく【苦しくても一人で頑張る】母親がいた一方、【疾患名やこれから先の情報を得て心が落ち着く】【疾患名がつかなかったことに一先ず安堵する】経験をした母親もいた。
考察:児の結果開示を受けた母親の受け止め方には、情報に対する準備状況、医療者の説明方法や説明の内容、親の気持ちへの寄り添いが影響する。【不安な思いを一人背負い込む】【苦しくても一人で頑張る】母親のそばに看護者は寄り添うことができていないのか、遺伝看護実践の障壁となるものが何であるのかを検討していく必要はある。母親を支援する中で結果開示時に用いる言葉に配慮し、希望、今後の見通しについての情報を含めることが大切である。また母親の思いや情報に対する準備状況を考慮し、適切な時期に説明を行う必要がある。そして母親に情報を伝える医療者が「生活する子ども」としての側面や疾患の臨床的多様性を実感していることは重要で、臨床現場以外で障がいのある人の生活に触れる経験をもつことは手助けになる。加えて医療者には傾聴すること、一緒に考えることなど家族に寄り添う姿勢が求められる。
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