1986年1月から1987年9月までの間に, 当院集中治療室の入院患者12名より今まで検出されたことのない第3世代セフェム剤に耐性の
Enterobacter cloacae (以下, 耐性
E.cloacaeと略す) が24株分離されたことから, 院内感染を疑い実態調査をし次のことが判明した. 1) 薬剤感受性成績 (昭和一濃度ディスク法) では, ampicillin, piperacillin, cefazolin, cefmetazole, cefotetan, ceftizoxime, cefotaxime, latamoxefのβlactam剤とfosfomycinに対し耐性を示した. またバイオテスト1号
® (栄研) を用いる生物型は24株すべて同一であった.2) 在室期間別分離頻度は, 短期在室 (30日未満) 患者由来
E.cloacae22株のうち耐性
E.cloacae2株 (9.1%) に対し, 長期在室 (30日以上) 患者由来
E.cloacae24株のうち耐性
E.cloacae22株 (91.7%) であり, 長期患者に分離頻度が高かった (P<0.01).3) 臨床的背景から耐性
E.cloacae検出患者は他の
E.cloacae検出患者に比べ重症患者であり, 滞在期間, 第3世代セフェム剤投与例に有意差 (P<0.01) が認められた.4) 環境調査では患者のベッドサイド近くに設置されている流し台排水口4ヵ所より検出された.以上のことから長期滞在による交差感染もしくは自己感染が考えられた.対策として耐性
E.cloacae検出患者には有効であった抗生剤imipenem/cilastatin sodiumを投与するとともに, 交差感染防止のために環境整備と手洗いの励行を徹底した.その結果, 新たな患者発生をみることなく沈静化することができた.
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