1.
札幌市
豊平区・清田
区における液状化 平成30年北海道胆振東部地震の発生に伴い,震度5弱-5強を観測した
札幌市
豊平区・
清田
区では,火山灰盛土による造成地に整備された住宅街において液状化が発生した.発生領域は,1970年代から80年代にかけて,周辺の支笏火砕流堆積物からなる丘陵地を切土して谷部が埋められた領域とよく一致し,この火山灰質な谷埋め盛土が液状化したことが明らかになっている(廣瀬ほか, 2018; 山下ほか, 2019).また,地震以前の盛土の原位置試験,地震発生後の流出した盛土の室内土質試験の結果,非塑性で液状化強度が低い盛土であると評価されている(江川ほか, 2016; 山下ほか, 2019).
2. 研究目的・手法
液状化により流出・噴出した盛土について,土質力学的・地質学的な視点から液状化の発生要因を検討することが目的である.
はじめに,豊平区月寒東,
清田
区里塚の2地点,および
清田
区美しが丘において流出・噴出した盛土を採取した.粒度分析では,石原(2018)に準拠してふるい分け試験を実施し,その結果を粒径加積曲線に示して粒度分布と液状化強度の関係を検討した.顕微鏡観察では,実体顕微鏡・偏光顕微鏡により粒度範囲ごとに盛土を構成する物質とその特徴を観察し,塑性との関係も検討した.
3. 研究結果
(1)粒度分析
いずれの試料も粒径がシルト-砂に相当する粒子を多く含み,“塑性指数が15以下の細粒土を含む砂が液状化しうる粒度範囲”(石原, 2018)に該当することが明らかになった.また,粒径が粘土-シルトに相当する細粒分は
清田
区美しが丘の試料(噴出した盛土)で最も多く,
清田
区里塚の試料(流出した盛土)で最も少なかった.
(2)顕微鏡観察
いずれの試料にも軽石や火山ガラスが大量に含まれていた.火山ガラスの形態を町田・新井(2003)に基づいて分類すると,バブル型(平板状・Y字状)および軽石型(繊維状・スポンジ状)であった.また,粘土鉱物(粒子間の結合力を高める役割)の含有量は,細粒分においても極めて少なかった.
4. 液状化の発生要因の検討
今回液状化した盛土は,液状化しやすい粒度分布を有することが明らかになり,また非塑性である原因としては,粘土鉱物の含有量が極めて少ないためと考えられる.このような土は乾燥状態では塊状にならず,含水状態では流動しやすい.そのため,普段から暗渠管への排水時には盛土も徐々に流出し,地震発生前に地盤の緩みや空洞化が生じていたことで液状化を助長したと考えられている(若松ほか, 2018).また,地震の前日には台風21号の接近に伴う降水があり,地下水位が高くなっていたと推測されるため,盛土の粒子は地震動で分散・流動しやすい状況であった可能性が高いと考えられる.
引用文献
石原研而 2018. 『地盤の液状化—発生原理と予測・影響・対策—』朝倉書店.
江川拓也・山梨高裕・冨澤幸一 2016. 火山灰質土の液状化特性に関する検討. 日本地震工学会論文集 16; 352-364.
廣瀬 亘・加瀬善洋・川上源太郎・小安浩理・卜部厚志 2018. 平成30年北海道胆振東部地震に伴う地表変動および強震動による被害(速報). 北海道地質研究所報告 90; 15-32.
町田 洋・新井房夫 2003. 『新編 火山灰アトラス[日本列島とその周辺]』東京大学出版会.
山下 聡・小川かける・川尻峻三・川口貴之・渡邊達也 2019. 平成30年北海道胆振東部地震で被災した火山灰造成地の液状化特性. 地盤工学ジャーナル 14; 353-361.
若松加寿江・尾上篤生 2018. 平成30年北海道胆振東部地震による宅地の地盤災害. 日本地震工学会 JAEE NEWSLETTER 7; 3.
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