本研究は、韓国
漫画
史における「海賊版日本
漫画
」を対象として、海賊版日本
漫画が韓国の漫画文化に与えた影響と日本から韓国へいかに漫画
表現方法が移植されたかを明らかにし、海賊版
漫画の存在にそのような文脈を与えることで漫画
分野における著作権の在り方に新たな視点を提示することを最終的目的としている。ここで本研究が対象とする「海賊版日本
漫画
」の定義とは、著作権法に基づきながら、韓国初の海賊版日本
漫画
が出版された1952年から現在まで、日本
漫画
を無断で模倣・模作・翻案・複製し、韓国で出版された
漫画とインターネットを通じて流通されているスキャン漫画
を全て包括する。その上で、不法無断複製物の「海賊版日本
漫画
」に対して、「文化伝達」という新たな側面からアプローチすることが従来の研究や報告と異なる本研究の特徴である。既に1930年代の日本
漫画
にW・ディズニーの「ミッキーマウス」などのキャラクターを無断使用した海賊版が存在し、「ミッキーの書式」を採用することで田河水泡の「のらくろ」などのキャラクターが成立したことが指摘されている。また、戦後、手塚治虫が「ジャングル大帝」などで画面構成やストーリーをディズニーの「バンビ」から借用したことは広く知られるところである。しかしそのことは日本
漫画
の独自性を否定するものでなく、むしろその成立の一つのきっかけに「海賊版」や現在なら知的所有権の侵害とみなされかねない模倣作品が重要な役割を果たしていたことをふまえた時、筆者は韓国
漫画
史が独自性を模索する中で「日本
漫画
海賊版」がいかに機能したかという視点が不可欠である、と考える。本論文では、そのための基礎的な作業として、歴史的な背景からの影響と関係性に着目し、日本統治時代から現在までの韓国
漫画
史について概観する。次に、韓国の
漫画
関連書籍、
漫画
関連機関の報告書、著作権関連書籍などの文献を参照すると共に、韓国の
漫画
家、
漫画
研究者、そして
漫画
関連機関を訪問し、資料収集と聞き取り調査を行うことで文献資料を補った。そこから韓国
漫画は漫画
史の半分以上の約60年間、統治時代の日本と軍部政権から統制されたことと、軍部政権の統制によって海賊版日本
漫画
の出版・氾濫現象が起きたことを確認した。そして、(1)日本統治時代から現在までの日本と韓国の歴史的関係、(2)韓国内の歴史的事件と
漫画
史の関係について概観し、海賊版日本
漫画
が登場した要因や歴史的変遷について考察した。考察の結果、35年間の日本統治時代は日本
漫画
を受容しやすい環境を形成し、韓国政府の日本大衆文化に対する排斥行為と軍部政権による
漫画
に対する弾圧は、日本
漫画
が海賊版として登場できる環境を作り出したことが明らかになった。さらにまた海賊版日本
漫画の出版によって韓国漫画の出版産業が発展したことと漫画
出版ブームを呼び起こしたこと、低級文化と認識された
漫画
を大衆文化へ転換させ、消費パターンを「借りて読む
漫画
」から「買って読む
漫画
」へ転換させたことなど、海賊版日本
漫画が韓国漫画
発展に与えた影響についても明らかとなった。
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