人間生活の安全性と確保するため, 易燃性物質の難燃化は重要な要素であるが, 我々の生活環境を取り巻く有機物は燃焼することが避けられないことから, 燃焼時の発熱量も安全性の尺度となり得る.
そこで, 衣服, 寝具素材を対象としてそれらの
燃焼熱
とそれらに対する防炎加工の効果について検討し, LOI値との対応において考察し, 次の結果を得た.
(1) セルロースの
燃焼熱
に対する防炎加工の影響は, 一時性の無機化合物を用いた場合,
燃焼熱
は減少し, LOI値が高く防炎性能を有する試料の低下が特に大きかった.
特にアンモニア, ハロゲンガスを発生する試料, 水分率の多い試料での低下が目立った.反対に有機性の耐洗濯性防炎加工では上昇する傾向が示された.
(2) 実物の1/100の小型ふとんによる実験結果から側布, わた両者とも未加工の場合に比べて両者共防炎加工試料の場合は
燃焼熱
が1/3以下に大きく低下した.一方のみが加工試料の場合は側布のみの難燃化よりわたを加工した場合の方が効果的であることが示された.
(3) 綿にPETを混合する効果は両者を1 : 1の比率に混合するのが妥当でありPETの混合率が20%以下になると充てん密度が高い場合逆効果がみられた.混合わたの加工の効果は充てん密度が高いほど大きく表れた.
(4) 汎用されている市販布の
燃焼熱
を検討した結果, 合成繊維より天然繊維の方が
燃焼熱
が低いが, 全体的に含チッ素繊維が炭化水素のみの繊維より高い値を示した.しかしそれらは加工により難燃性が付与されると低下する傾向を示した.
(5) 易燃性繊維製品の燃焼時の発熱量を防炎加工で低下させることにより安全性が高まることが言及された.
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