紅斑熱群リケッチアの感染経路を解明する目的として, 自然宿主と思われる動物の抗体保有状況調査とオトリ動物を使った感染実験を実施した. 抗体価≧1: 40を陽性とし, 結果は以下の通りであった.
1. 処分犬 (115頭) は18.3%が抗体 (平均抗体価1: 68) を保有していたのに対し,
猟犬
(8頭) は全てが抗体 (平均抗体価1: 67) を保有していた.
2. 牛 (234頭) は17.9%が抗体を保有し, その抗体価の分布は1: 40~1: 160 (平均1: 68) であった.
3. 野生鹿 (69頭) は92.7%が抗体を保有し, その抗体価の分布は1: 40~1: 640 (平均1: 89) と, 調査した動物血清の中では最も高い値を示した.
4. 捕獲した野ネズミは, アカネズミ (
Apodemus soeciosus) が552匹, ヒメネズミ (
Apodemus argenteus) が46匹, スミスネズミ (
Eothenomys smithi smithi) が13匹であった. 抗体保有率はアカネズミが16.5%と最も高く, 次いでヒメネズミが4.3%, スミスネズミが0%であり, 野ネズミの種類によって抗体保有率に大きな差がみられた. また, アカネズミの抗体保有率を患者発生地域 (280匹) と対照地域 (272匹) に区分して比較すると, 対照地域が10.4%であるのに対し, 患者発生地域では22.8%であった.また, 患者発生地域内でも捕獲地点により抗体保有率に差 (0~32.2%) が認められ, 感染野ネズミの分布は限局した場所と考えられた.
5. 実施した感染実験では, オトリ動物からは紅斑熱群リケッチアに対する抗体は検出されなかった.
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