Wistar-Imamichiラット育種集団に
Trichophyton mentagrophytes感染による白癬が発生した。発生状況を調査したところ雌では49匹 (10%) , 雄では150匹 (44%) の動物に脱毛, 痂皮形成などの白癬の症状が認められた。皮膚の症状から白癬と診断した118匹の動物について被毛の培養検査を3回くり返したところ, 107匹 (90.7%) から菌が検出され白癬の摘発には習熟した臨床診断が有効と考えられた。哺育中の母親ラットでも白癬菌の感染がみられたが, それらの乳仔からは全く菌が検出されなかった。
本症の撲滅にあたってラットの原種を維持する立場では全群の淘汰が不可能であるため, 臨床診断と被毛の培養検査による感染動物の摘発淘汰と徹底した消毒をおこなった。全動物を汚染動物舎から搬出した後, 10%ホルマリン溶液, 3%プロピオン酸ナトリウム溶液による消毒をくり返した。動物の新規搬入時には白癬菌の非感染母ラットからの離乳仔のみを対象とし, 3%プロピオン酸ナトリウム溶液の温浴をさせたのちに搬入した。その後毎月1回全動物の臨床症状の検査と被毛の培養検査を行なうとともに, ヨードホール剤による飼育器材の消毒を励行した。コロニーの再編成後4カ月後に3匹の白癬陽性動物が発見されたが直ちに淘汰した。その後5年間白癬菌は全く検出されず, 撲滅したと考えられるに至った。
稿を終わるにあたり御指導いただきました実験動物中央研究所の田嶋嘉雄博士, 慶応義塾大学医学部の前島一淑博士に感謝いたします。
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