10ヵ月男児。異常な顔貌(odd face)にて経過観察されていたが,基礎体温の高値および発汗低下のため,皮膚科紹介受診となった。臨床所見は,鞍鼻,粗な頭髪,耳介の低位置,口唇の突出,また体幹四肢は鱗屑を伴う紅斑を認め,滑らかで薄い皮膚がみられた。歯牙形成は,認められなかった。背部の病理組織学的所見では,非連続の4枚の切片にはいずれも,真皮に汗腺·毛包·脂腺を認めなかった。発汗試験陰性。以上の臨床所見,病理組織像,発汗試験から,無汗性外胚葉形成不全症と診断した。以後,萎縮性鼻炎,
眼瞼内反症
による角膜びらん,気管支喘息を発症し,耳鼻科,眼科,小児科で定期的に加療されている。早期診断によって,発熱による死亡と脳障害を予防することが重要であり,クーラーの使用や物理的な体表面の冷却等適切な温度管理で,現在のところ脳障害などの問題はみられていない。
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