リチウムイオン電池 (LIB) は、例えば取り扱いを誤り、過充電、過放電、外部
短絡
といった状況になった場合には、電池内部で自己発熱反応が起こり、最終的には熱暴走に至る可能性がある。通常、LIBを使用する場合には安全装置を内蔵した電池を使用したり、制御系統に保護回路を設けて、そのような事態が発生することを未然に防いでいる。しかし、微小金属粉の混入や集電体の折れ曲がりによる内部
短絡およびその内部短絡
に起因する熱暴走は、安全装置や保護回路が正常に作動していても防ぐことのできない事象である。このような保護回路等で防ぐことができない内部
短絡
に対して安全性を確保する目的で作られた民生用LIBを対象とした試験法が、JIS C8714やIEC 62133-2などに規定されている強制内部
短絡
試験 (FISC試験) である。
一方、自動車用LIBでも民生用と同様に内部
短絡
が発生するリスクがあることから、単セルを対象とした自動車用LIBの安全規格であるIEC 62660-3にもFISC試験が規定されている。しかし、FISC試験は単セルを解体し金属異物を模擬した一辺1mmのL字ニッケル片を挿入する必要があるため、技術面及び安全面で実施が難しい場合があることから、より容易かつ安全に実施できる代替試験の選択が可能となっている。代替試験の候補としては、単セルを解体する必要が無いセラミック釘を使用した釘刺し試験が、関連情報としてIEC/TR 62660-4にまとめられている。ただし、FISC試験との同等性の確認などが課題として挙げられており、標準試験法として採用するにはさらなる検証が必要となっている。
筆者らはFISC試験の代替候補であるセラミック釘刺し試験について、特にFISC試験との内部
短絡
層数の同等性について調査してきた。FISC試験の内部
短絡時の短絡
層数は1~2層に対して、セラミック釘刺し試験時の
短絡
層数は多くなる傾向にあった。なお、
短絡
層数の数え方は、Fig.1に示す通り負極層-正極層
短絡
で1層、負極層-正極層-負極層
短絡
で2層
短絡
としている。試験時に内部
短絡
を検知する方法としては、予めセル電圧の低下幅を決め、その低下幅以上の電圧低下が確認された時点を内部
短絡
したと見なし、FISC試験では加圧治具またはセラミック釘の移動を自動停止する操作を行っている。過去の結果より、FISC試験とセラミック釘刺し試験で、電圧低下幅を同一値にしても、セラミック釘刺し試験のほうが若干
短絡
層数が多くなる傾向が見られてい。これまで
短絡
層数の評価は、試験後のセルを解体し、セパレータの貫通穴の有無で確認していたため、電圧低下挙動と
短絡
層数の関連性が不明であった。そこで今回、
短絡手法の違いによる電圧低下挙動と短絡
層数の関連性を比較するため、放射光X線を用いた内部
短絡
時のその場観察を行った。
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