はじめに
近年の重症心身障害児医療の課題として、成人期移行問題、重症心身障害児(者)(以下、重症児 (者))を診る
医師
の慢性的不足があげられている。こうした課題への対応には成人科
医師
の理解・協力が必須と考えられ、医学生や研修医に対して、重症児(者)医療の早期体験実習を行うことで重症児(者)医療への理解が深まるのではと、有効性の報告もされている。当センターは医療型入所施設であり、かつ、重症児(者)への外来診療、リハビリを含めた幅広い療育を提供する施設であるが、施設特徴を生かし、医学生に重症児(者)と多くふれあってもらうことでの心理的変化の検討を行った。
対象・方法
対象は2017年2月〜10月にかけて当センターで臨床実習を行った医学部5、6年次の全学生、計98人(男61人、女37人)。実習時間は1時間。実習内容は、重症児を抱っこする体験、保育活動への参加、成人期を含む重症児(者)病棟の見学、その他に重症児(者)医療の現状、親支援、ピアサポートに関する講義であった。実習前後での子どもに抱く感情、重症児(者)へ抱く印象を無記名で調査した。調査にあたり、当センター倫理委員会の承認を得た。
結果
子どもに抱く感情は実習前後で「好き」が40人から43人に増加、「苦手」が4人から1人に減少した。重症児へ抱く印象は38人が良い意味で変わったと回答した。「抱っこした際、さらにかわいく感じた」、「重症児は笑顔が少ないと思っていたが、表情豊かだった」、「成人科
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になっても関われたらと思う」といった前向きな自由記載も認めた。
考察
今回の実習は1時間という短い時間の実習であったが、既報の半日〜1週間の早期体験実習と同様に好意的な心理的変化を促せる可能性が示唆された。子どもたちに実際にふれあってもらったことが好影響であったと考えた。短時間の実習であれば多くの施設で行える可能性があり、早期体験実習が広がりやすいと考えた。
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