1) 膣垢細胞診による妊娠診断の可能性を検討するために, 妊娠雌羊における膣垢細胞中の大有核円形上皮細胞の出現頻度および細胞と核の長径×短径の比を求め, 非妊娠雌羊の場合と比較した。また, 超音波ドップラー法との妊娠診断適中率を比較, 検討した。
2) 大有核円形上皮細胞の出現頻度は妊娠51~60日目に最高 (53.1%) を示し, その後妊娠の進行に伴い減少したが, 妊娠131~140日目に再び上昇 (323%) した。一方, 細胞と核の大港さの比は妊娠雌羊と非妊娠雌羊との間には有意差は認められず (040±0.04,041±0.04), 妊娠期間中においてもほとんど変動はなかった。
3) 大有核円形上皮細胞の出現, 特にその集合性を指標とした場合, 妊娠陽性適中率および妊娠陰性適中率は各々879%, 48.3%であった。妊娠50~100日目と妊娠131~140日目において, 特に高い (90~100%) 妊娠陽性適中率が得られた。
4) 超音波ドップラー法との比較では, 妊娠陽性適中率 (99.1%, 912%) および全体の適中率 (98.1%, 88.8%) は有意に低下した (P<0.05) が, 妊娠陰性適中率は有意な差は認められなかった。以上のことから, 超音波ドップラー法に較べると, その診断適中率は低いが膣垢細胞中の大有核円形細胞の出現頻度およびその集合性から, めん羊の妊娠診断が可能のように思われた。ただ, 妊娠陰性適中率が低かったことは今後の課題となろう。
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