本論は,ベンチマーキング (BM) 手法をニュー・パブリック・マネジメント (NPM) の理念を実現するための意思決定支援およびコミュニケーション・ツールと位置づけ,その活用事例を紹介するとともに,同手法を廃棄物行政に活用する意義や留意すべき要件を検討・整理した。BM手法は,もともとは民間部門において発展してきた手法であり,時系列的業績の自己評価や他自治体の業績と客観的なグループ比較・評価を通して,業績改善策や目指すべき目標を探求・設定し,その達成にむけて業務運営を改善していく継続的プロセスである。近年,同手法の公共部門への適用が進んでいる。
廃棄物行政においてBM手法を導入する際には,目指すべき成果・将来像 (アウトカム) を明示し,予算・人員などのインプットから実施施策 (アウトプット) を通して実現されるアウトカムに至る階層的繋がりを明確にした指標群を設定することが有益である。また,同手法の活用に関して特に重要な課題は,業績比較を行う際の自治体分類基準の設定,指標値を算出するための情報基盤の整備,廃棄物行政に精通した人材の育成,比較・評価結果が有する情報の非対称性および報奨制度との関係である。
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