2013 年 2013 巻 23 号 p. 58-66
昨今,民間企業における不適切な会計処理を巡って,社会の関心が高まるとともに,監査の基準の一部改正が議論されたが,あくまでも財務諸表監査の範疇に限定されている。
他方,公監査とりわけ自治体における「地方公監査」については,地域住民の情報ニーズの拡大(説明責任の拡大)に伴い,英米のみならずわが国においても,準拠性監査・財務監査(財務諸表監査)・業績監査といった異なる機能の監査が重層的に発展してきた。わが国の地方公監査制度に関して,公認会計士は多大な貢献をしており,本稿ではまずその実態を明らかにする。次に,異なる機能を有する地方公監査が,パブリック・ガバナンスの諸課題やガバナンスの諸原則といかに関連しているかについての研究がわが国では進んでいないため,英国におけるパブリック・ガバナンスの理論と原則を元に整理し,1つの方向性を示す。最後に,厳しい地方財政に対応すべく,包括外部監査制度や行政監査制度が,「保証業務」の概念に整合した業績監査へと理論的に純化するための要件も明らかにしたい。