2015 年 2015 巻 25 号 p. 95-103
わが国における金融商品取引法にもとづく財務報告に係る内部統制の報告および監査制度が始まり6年が経過している。同制度は先行する米国と比べ,企業に対する導入コストを軽減でき,経営者に対して不正問題に対する取り組みを意識するきっかけになったことは明白であるが,さらなる進展のために,監査理論の観点からいくつかの検討すべき課題がある。そこで本稿では,内部統制監査は基本的には財務諸表監査と相俟って,財務報告の信頼性付与に貢献するものであるという視点に立ち,米国の両監査の統合監査におけるリスク・アプローチに関する研究を手がかりに,内部統制監査の特質を考慮した内部統制監査モデルについて検討するとともに,財務諸表監査と内部統制監査との関係について若干の考察をしている。