症例は51歳男,夜間胸痛発作を主訴に入院.夜間発作時,II,III,
aV
F誘導でSTは上昇し,発作はNitreglycerine舌下で速やかに消失した.冠動脈造影像では右優位型を呈し,右冠動脈主幹部中央の25~50%の器質的狭窄以外異常を認めない.異型狭心症と診断し,Diltiazem投与にて発作は軽減した.約5ヵ月後,勤務先で胸部圧迫感を覚え,Nitroglycerine舌下で寛解するも再度,冷汗,嘔吐を伴う胸部絞扼感が出現し再入院.心電図,血清酵素所見および左室造影矇から下壁梗塞と診断した.本例では(1)梗塞発症前に異型狭心症と診断され,冠動脈の有意の器質的狭窄を欠き,狭心発作の原因として冠痙攣が示唆されている.(2)梗塞発症直前にNitroglycerine有効の胸部圧迫感があり,梗塞発症8時間後から記録されたHolter型テープ心電計で下雖側誘導で無症候性のST上昇発作の頻発をみた.(3)梗塞発症前後の冠動脈造影像の比較でまったく差をみなかったことから冠痙攣による梗塞発症の可能性が高いと考えられた.
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