【はじめに、目的】
高齢者の
社会参加
は、身体・認知機能、精神的健康に有効であ ることが報告されている。加えて、高齢者では地域レベルの要因が個人の身体活動や認知症発症と関連することが示されているが、精神的健康との関連はよく分かっていない。本研究では、地域レベルの
社会参加
割合と高齢者個人の精神的健康の関連を検討することを目的とした。
【方法】
2021年11月に、東京都A区に在住する65歳以上で要介護認定を受けていない全ての住民75,343人を対象に実施された郵送 調査データを用いた。回答者51,741人のうち、
社会参加
と精神的健康に欠損のない45,770人 (男性20,093人、女性25,677人、平均年齢75.7±6.8歳)を解析対象とした。
社会参加
は、ボランティア活動、スポーツ活動、趣味活動、学習・教養サークル、通いの場、シニアクラブ、町内会・自治会のうち、いずれかのグループに月に1回以上参加を「
社会参加
あり」、月に1回未満を「
社会参加
なし」とした。精神的健康は、WHO-5精神健康状態表簡易版を用いて、15点満点中8点以上を精神的健康 「良好」、7点以下を「不良」とした。地域レベルの
社会参加
割合は、115の町丁目ごとに算出した。説明変数は、地域レベルの
社会参加
割合 (10%単位)、個人レベルの
社会参加
の有無、地域レベル×個人レベルの
社会参加
(クロスレベル交互作用)とし、年齢、性、家族構成、教育期間、所得区分、BMI区分、就労、フレイル、疾患数を調整したマルチレベルポアソン回帰分析を行った。
【結果】
対象者のうち、
社会参加
ありは16,477人 (36.0%)、精神的健康不良は15,505人 (33.7%)であった。
社会参加
割合は、19.2 ‐61.1%の地域差があった。調整済み有病割合比 (95%信頼区間)は、地域レベルの
社会参加
割合 (10%増加ごと)が0.95 (0.91-0.99)、個人レベルの
社会参加
が0.67 (0.65-0.70)、地域レベルと個人レベルの交互作用は1.00 (0.92-1.09)であった。
【考察】
本結果より、
社会参加
割合が10%高い地域に住む高齢者は、個人の
社会参加
の有無にかかわらず、精神的健康不良が5%低いことが明らかとなった。地域全体の
社会参加
が増えることは、在住高齢者の良好な精神的健康に関連することが確認され、生活圏域レベルまたは自治体レベルでの
社会参加
の促進の重要性が示唆された。
【倫理的配慮】
本研究では、当該自治体が実態把握・分析の目的で収集したデータを二次利用した。よって、本研究で使用する情報は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の「既存試料・情報の提供を受けて研究を実施しようとする場合」に該当し、インフォームド・コンセントを受けることを要しない。また、本研究の実施については、当該自治体および東京都健康長寿医療センターの研究倫理委員会の承認を得ている。
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