本稿では,中世日本陰陽道の重要な資料である『簠簋内伝』における
神仏習合
の融合的なパターンを分析する.このパターンは主に仏教の神々ではない垂迹と仏教関係の本地を結びつく本字垂迹説に従う.しかし,『簠簋内伝』における
神仏習合
は神道と仏教の神々を結びつくだけではなく,十二支や十干などの陰陽道的な概念も取り込む.したがって,『簠簋内伝』における融合的なパターンは元来の
神仏習合
思想を拡大し,複雑な融合のパターンを発生する.『簠簋内伝』では神道神話・儒教・陰陽道の要素は仏教要素と融合し,本来違う思想体系からの要素は一つの習合的な思想体系に取り込んでいる.このシンクレティズムは中世日本思想の重要な特徴であり,中世日本哲学と神学を理解するためにそれを無視してはいけない.
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