秋田県はわが国でももっとも脳卒中死亡率の高い県の一つであるが, この多発の要因を分析する目的で, 秋田県でもとくに脳卒中の多い雄和町と, これに近接しながら, 比較的低い死亡率を示す天王町から, 各一部落を選び30才以上の全住民を対象として, 血圧, 尿蛋白, 尿糖, 血清総蛋白, 血清尿酸, 血清コレステロール, 中性脂肪, 燐脂質, 脂酸分画とくにリノール酸とオレイン酸 (L/O比), 頭蓋内血管壁石灰化, 眼底, 心電図の諸検査を全例に施行し, さらに各人の食餌内容をアンケート調査した.
その結果, 血圧は脳卒中の多い雄和で各年令別の平均の血圧値は, より高く, また高血圧者の頻度も多いことが認められた. 心電図の高血圧性変化の有所見者も雄和町により多く存在した.
このことは, 雄和における脳卒中多発と高血圧との関連性を強く示唆しているものと考えられた. さらにこの雄和町の住民の血圧が高値を示した原因についても2, 3の検討を行った.
これまでも問題とされていた血清脂質値は, コレステロール, 燐脂質, 中性脂肪などについては脳卒中多発との関連性は見出されなかった. むしろ, 脳卒中の少ない天王町にL/O比の低下, 尿酸の高値傾向が認められ, これらの結果と脳卒中の発生との関係が注目された.
脳動脈硬化症を示唆していると考えられる眼底有所見, 頭蓋内石灰化の頻度は多少雄和に多い傾向は認められたが, 推計学上明確な両地区間の差は見出されなかった.
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