東京都西部の12か所の異なった住宅地において,越冬期(1990年12月~91年1月)と繁殖期(1991年5~6月)の鳥類群集を調べ,
種数
,種構成,生息密度に影響する環境の特徴を明らかにした。また,住宅地内の土地を植生に覆われた土地,建物に占められた土地,裸地に分け,それぞれに対する鳥の選択性を検討した。越冬期,繁殖期とも,植生の豊富な住宅地では鳥類の
種数
や生息密度が高い傾向にあり,高木(8m以上)の密度や平均樹高は,
種数
の変異を最もよく説明する要因であった。越冬期には低木層(0.5~2m)の被度も鳥類
種数
に関係していた。一方,建物の量が増加するにつれ,越冬期の鳥類
種数は減少したが繁殖期の種数
は逆に増加する関係があった。スズメはほとんどの住宅地で最も優占している種だったが,植生のきわめて少ない環境では密度が低かった。植生に覆われた土地はほとんどの鳥種に好んで利用されていたが,建物に占められた土地や裸地(おもに道路)は忌避される傾向が強かった。各土地タイプに出現した鳥類の
種数を面積割合から統計的に期待される種数
と比べたところ,建物に占められた土地や裸地では期待値より少ない
種数
しか出現しなかった。住宅地の環境の違いによる鳥類群集の違いから,多様な鳥相を保全するたあに求められる住宅地の環境基準について提案を行なった。
抄録全体を表示