目的本研究の目的は, 正常に進行している仰臥位分娩において第4回旋終了後, 陣痛によって自然に肩甲が娩出されるのを待つという経験から学んだ方法 (A群) と, 教科書に記載されている積極的に児の肩甲を誘導し娩出させる方法 (B群) で, 助産師の手掌部にかかる圧力とその部位をそれぞれに同定し, 比較検討することである。
対象および方法単胎妊娠で今回の妊娠・出産に影響を及ぼすような合併症がなく, かつ産科合併症がない産婦63名をリクルートした。研究に同意が得られた60名を対象とし, 結果として実施できたのは初産婦21名, 経産婦20名であった。測定用具には, 富士フィルム圧力測定システム「プレスケール」を用いた。両手にプレスケールを貼付した手袋を装着した助産師が, A群B群それぞれの方法で肩甲娩出を行い, 測定直後のプレスケールフィルムの発色濃度を圧力値に換算し, 両手掌にかかる圧力の程度と部位を比較した。
結果肩甲娩出時, A群B群で助産師の両手掌にかかる圧力の部位が異なっていた。そしてA群と比較してB群の方が両手掌への圧力が高かった。A群の右手には0.25×10
-2MPaから3.05×10
-2MPaの範囲で圧力がかかり, 特に小丘が高く, 左手は0.2×10
-2MPaから2.25×10
-2MPaの範囲で, 特に母指が高かった。B群右手には, 0.05×10
-2MPaから3.52×10
-2MPaの範囲で圧力がかかり, 特に示指と中指の先, 小丘と小指の基節が高く, 左手は0.6×10
-2MPaから4.29×10
-2MPaの範囲だった。左手の中指先には今回の研究の中で最大の圧力がかかっていた。
結論肩甲娩出時の圧力付加部位と概算値が, 助産師の手掌を通して明らかになった。その結果, 助産師の手の使い方への理解が深められた。
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