歯冠修復物は口腔内にあって生体の加齢変化に調和して咬合の支持, 安定および審美性から適度な摩耗傾向を示す必要がある.本研究ではリン酸カルシウム系
結晶化ガラス
の臨床的摩耗状態を把握する目的で, 歯ブラシ摩耗試験前後の摩耗量および光沢度さらに二物体間滑走摩耗について基礎的な検討を行った.グレーズ処理, 機械的研磨およびアドオン基材を施した
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試料, さらにハイブリッドセラミックス2種について歯磨剤を介在させて40,000回の往復滑走歯ブラシ摩耗試験を行い, 試験前後の摩耗量および光沢度の変化について検討した.一方, 12%金銀パラジウム合金球(金パラ球)に対するグレーズ処理を行った
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, エナメル質およびポーセレンの, さらにグレーズ処理を行った
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に対する金パラ球, 機械的研磨を施した
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球およびエナメル質の200,000回における二物体間滑走摩耗試験を行い摩耗量の変化について検討した.その結果, 歯ブラシ摩耗試験においては機械的に研磨された
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が最も摩耗量が少なく, ついでアドオン基材を施した
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でハイブリッドセラミックスとほぼ同程度の摩耗量であった.また, 摩耗試験前後の光沢度の変化はグレーズ処理および機械的研磨を行った
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でわずかであった.一方, 金パラ球に対する滑走摩耗量は, グレーズ処理を施した
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においてポーセレンよりもかなり大きく, エナメル質との差は少なかった.さらに機械的研磨の
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球に対するグレーズ処理の
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の摩耗量はエナメル質とほぼ同程度で, 金パラ球の場合に比べ少ない摩耗量であった.また,
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の硬さは, エナメル質との間に有意の差が認められなかった.
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