一般に,単一な数値としての遺伝率が用いられているのは,相加的遺伝分散の表型分散中に占める割合は改良しようとする家畜の集団が示す表型価の水準全体にわたって一定であるという仮定の上に立っているからである.したがって,この基本的な仮定が満足されているか否かは,家畜改良の効率に直接影響を与える問題であり,常に十分な注意を払われるべきであろう.本研究は,この問題を無作為交配が行なわれているマウスの非近交集団において,その体重の親子回帰が常に線型であるか否かという形でとらえて検討しようとするものである.今回は,親子回帰の
線型性
検討の第1段階として,性および同腹兄弟数の2要因についてデータを補正する方法を検討した.補正によるデータの性質そ変化を分散分析により調べたところ,今回試みた基準との差を加える方法と基準との比を乗ずる方法の2通りの補正法はともに同腹兄弟数内腹の分散成分の大きさにあまり大きな変化を起させることなく,性と同腹兄弟数の分散成分を著しく収縮させ,確かな効果をあげていることが明らかになった.また,世代•飼育室区分別にまちまちであった親子回帰係数が補正により一定の水準に収れんする傾向がみられ,この事実からも補正が有効であったと考えられる.しかしながら,こそような補正を加えた後も,なお,親子回帰の
線型性
が何らかの形でくずれていることが明らかになった.
より効率の高い,データの補正法を検討したうえで,今回認められた回帰の非
線型性
の実態を調べることを,今後の課題とする.
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