本論文は,戦後日本における福祉社会学の展開過程の見取り図を描くとともに,その成果と残された課題を筆者の問題意識に基づいて検討することを課題としている.この課題に即して,1節から4節では,(1)1948年の福武直論文と戦後日本の社会政策学の研究の展開との関連, (2) 社会開発論から社会計画論・社会指標論へとつながる1960~70年代の研究の展開, (3)福祉国家論・比較社会政策研究の展開, (4)副田義也による福祉社会学研究の展開にっいての検討を行った. (1)に関しては,福武論文に,社会民主主義モデルの福祉国家論の方向への研究の展開の潜在的可能性が含まれていたが,その可能性が実現する条件がなかったことを指摘した. (2)に関しては, コミュニティ論等の応用研究の出発点としての社会開発論の歴史的意義が評価されるべきであることを指摘するとともに,社会計画論・社会指標論に関しては,基礎理論のレベルでの政策論・計画論の理論枠組みと分析手法の開発という点での研究史上の意義が大きいと論じた. (3)に関しては,80年代以降の日本での研究の展開を整理するとともに,今日では,この分野の研究が学際的に展開されるようになっていることを指摘した. (4)については,福祉社会学理論の特徴を中心に,副田の研究業績について検討を行った.最後に5節では,福祉社会学の研究史および今後の課題の検討にあたって考慮すべき論点を3点あげて若干の考察を行った.
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