【はじめに】重症心不全患者や虚血性心疾患(IHD)患者に対して低強度レジスタンストレーニング(RT)の安全性や効果は多数報告されている.しかし慢性腎臓病 (CKD)患者でIHDや低心機能を合併した患者に対するリハビリテーション(リハビリ)介入の安全性はまだ確立されていない.今回IHDを合併した高齢CKD患者に対し,低強度高頻度RTの実施によりADL能力の維持に繋がった症例を経験したため報告する.なお,発表に際し本人に説明し同意を得た.
【症例】入院前ADLが自立していた70歳代男性,労作時の呼吸困難感を主訴に当院受診され,IHDによる心不全とCKD増悪の診断で入院となった.
【経過】入院後加療中に腎機能の著明な悪化を認め,人工透析(HD)の導入を行い,安静度が上げられずベッドサイドでのリハビリ介入を余儀なくされた.その後、冠動脈造影検査にて重症三枝病変も認め,HD導入と合わせ廃用症候群の進行が危惧された.そのため40分間のリハビリ介入に加え,心負荷を考慮し1日合計3回の低強度高頻度RTの自主トレーニングを指導した.
【結果】退院時膝伸展筋力:30kgf/kg,前方リーチテスト:30cm,機能的自立度評価法:112点であり入院前ADLを維持できた.
【考察】本症例は末期CKDとIHDにより十分な運動強度のリハビリ介入を実施することが困難であった.末期CKD患者における安全で有効的な運動療法は確立されていないのが現状である.そこで,心不全ガイドラインで推奨されている低強度RTを高頻度で実施した.低強度高頻度RTは,末期CKD患者に対してもHD導入後の廃用進行予防に寄与し,身体機能・ADLとも維持されたため,安全かつ有効的な介入方法と考えられた.今後は,末期CKDに心疾患を合併した症例に対して,より安全で有効的なRTの運動強度や頻度の更なる検討が必要である.また,本症例ではHD中の介入は実施しなかったため,HD中のRTの運動処方や安全性の検討を行っていくことが必要と考えられた.
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