背景.原発性肺癌の心臓転移は剖検ではしばしば経験されるが, 生前に診断されることは少ない.
症例. 7歳, 男性. 右前胸部痛を主訴に入院. 胸部X線・CTにて左肺門部に腫瘤陰影を認め, 縦隔内に浸潤し左上葉は無気周を呈していた. 右前胸壁にみられた腫瘤の生検と喀痰細胞診の結果から, 肺扁平上皮癌 (T4N3MI Stage IV) と診断した. 入院時の心エコー検査にて左室内に心臓粘液腫様の結節性病変を認めたが, 経過中形態の変化, 左室壁への浸潤戸見が明らかとなり, 左房内に新たな病変も出現したことから, 原発性肺癌の心臓転移と診断し, 剖検でも確認された.
結論. 本症例における原発性肺癌の心臓転移は心エコー上, 特異な形態を示し心臓粘液腫との鑑別が困難であった. さらに剖検にて心筋転移が証明され比較的稀な転移様式であると考えられた. 他臓器に悪性腫瘍がある場合, 心臓腫瘍の診断は慎重に行われるべきである.
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